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15. 日本に5000万社のサラリーマン法人を!

日本に5000万社のサラリーマン法人を!

サラリーマンが支払う所得税は、年収から給与所得控除や扶養者控除など各種控除を引いた給与所得に対して、たいていは10%(課税所得330万円未満)か20%(課税所得330万円以上900万円未満)なので、実はたいして「酷税」というわけではありません。専業主婦に子供二人という標準世帯(年収800万円)では所得税の実質税率は4%、地方税・住民税を加えても6%強にしかなりません。

世界的に見ても、日本は税金の安い国

なのです。

では、大半のサラリーマンが抱いている「酷税感」は幻想なのでしょうか?

そんなことはありません。実は、「酷税」の正体は厚生年金・組合健康保険・介護保険・失業保険などの各種社会保障費にあります。これらを加えて先のサラリーマンの実質税・社会保障費コストを概算すると、実に25%にもなります。

一生懸命稼いだお金の4分の1を国に召し上げられている

わけです。これを“略奪”と言わずして、なんと表現すればいいのでしょう!

とくに厚生年金・組合健康保険(政府管掌健康保険などを含む)は、自営業者が加入する国民年金や国民健保に比べて、給付に対してはるかに負担が重くなっています。年金も健保も要はドンブリ勘定なので、結果的に、自営業者などはサラリーマンの支払った保険料から多額の給付を受けているからです。

年収800万円のサラリーマンの場合、概算で、年間に厚生年金100万円、組合健康保険60万円(介護保険込)を支払っています(労使折半)。それに対して、同じ条件の自営業者は国民年金32万円、国民健保20万円(東京都)を支払うだけですから、その差額負担は年間で100万円以上にもなります。もちろん、厚生年金・組合健保は国民年金・国民健保に比べて優遇されてはいますが、それでもこれではとうてい話になりません。

では、私たちサラリーマンがこうした理不尽な事態にいつまでも耐えつづけなくてはならないのでしょうか。

しかし、絶望するのはまだ早いようです。所得税廃止論を唱える異端の公認会計士・安部忠氏から、「サラリーマン法人化計画」という魅力的なプランが提案されているからです(『税金ウソのような本当の話』<講談社>)。

私たちサラリーマンは個々に企業と雇用契約を結んでいます。それに対して安部氏の「サラリーマン法人化計画」では、現在の労働条件を維持したまま、サラリーマンが自らを法人化することで、企業は「株式会社鈴木」や「有限会社佐藤」などのサラリーマン法人と業務委託契約を結ぶことになります。鈴木さんや佐藤さんなどの個人は、本人が社長を務めるこのサラリーマン法人から役員報酬を受け取るわけです。

企業にとっては、社員に支払う給与も、サラリーマン法人に支払う業務委託費もともに経費として全額計上できますから、財務上の問題は発生しません。そのうえ、税制のグレーゾーンにある福利厚生費や接待交際費を計上しなくてもいい分、税務会計はずっとすっきりします。

一方、サラリーマン法人の立場は、これまでのサラリーマンとは大きく異なります。

まず、これまでは「個人対会社」という雇用関係にあったものが、「会社対会社」という法人同士の契約関係に変わります。年功序列や終身雇用制度で保護されることもないかわりに、従来の雇用契約にしばられない青天井の報酬も可能になるでしょう。そうすればサラリーマンの世界でも、プロ野球やサッカー選手のような、実績に応じた年俸制が主流になるかもしれません。もちろん、これまでの雇用関係を延長し、報酬の上限が抑えられるかわりに、10年や20年の長期契約を結ぶことも可能でしょう。

これまで、所得税に極端な累進課税を行なっていた日本では、年収1,300万円程度を超えると、給料が増えても納税額で帳消しになってバカバカしいだけなので、豪邸を社宅にしたり、美人秘書を雇ったり、運転手つきの専用車をつけたり、接待交際費でホステスと遊んだり、どうだっていいようなことに大金を投じてきました。こうした福利厚生費や接待交際費、半額負担の社会保障費、通勤交通費などを加えると、サラリーマン1人当たりにかかる実質人件費は年収の1.5倍というのが相場になっています。年収800万円の社員(鈴木さん)に会社側が支払う給与は、ほんとうは1,200万円(800万円×1.5)なのです。

個人との雇用契約を、法人との業務委託契約に変更すれば、こうした雇用にともなうシャドー・コストは不要になりますから、仕事内容はまったく同じでも、「有限会社鈴木」と年1,200万円で契約しても損にはなりません。法人化にともなう節税効果 などを考えれば、鈴木さんとしても、800万円だった報酬を200万円アップして、「有限会社鈴木」と年間1,000万円で業務委託契約を結ばせれば充分モトはとれるでしょう。サラリーマン法人化は、個人の手取りを増やし、なおかつ会社は人件費を削減できるという、素晴らしいアイデアなのです。

法人化にともなうサラリーマンの最大の変化は、事業年度末には法人として、年度末(3月15日まで)には個人として、税務申告する必要が生じることです。当然、給与所得控除のようないい加減な経費算定は通 用せず、背広やカバンから取引先との接待、語学研修・留学費用まで、サラリーマン法人として仕事を遂行するためにかかった経費をすべて計上し、場合によっては税務署と折衝しながら、法人税を支払っていくことになるわけです。

これは、これまで自分の税額など知りもしなかった大半のサラリーマンにとって革命的な事態です。そのとき、売上に対して25%もの税・社会保障費が課せられることに対して文句ひとつ言わずに従う人がどれだけいるでしょうか?

こうしたサラリーマン法人では自宅が事務所代わりになりますから、家賃の一部は事務所経費として控除できます。車もリース契約してしまえば、経費で処理することができるでしょう。通 信費や資料費、パソコンなどの購入費は当然、経費にすべきですし、得意先との飲食やゴルフも接待交際費として一定額を控除できるでしょう。

法人化の暁には、当然、奥さんや子どもを社員として雇用し、給与を支払うようにすべきです。その金額を年間103万円以内(基礎控除38万円+給与所得控除の最低額65万円)にしておけば所得税はかかりませんし、住民税も最低額で済んでしまいます。要するに、自営業者が当たり前のように行なっている節税策を、サラリーマンも利用できるようになるわけです。

このように、生活コストの一部を法人の経費に移転させたうえで、本人が受取る役員報酬を課税最低限あたりまで減額してしまえば、所得税や住民税・国民健康保険料もぐっと安くなります。これだけのコスト削減効果 があれば、税理士や公認会計士に面倒な記帳作業をアウトソースしても、充分に割が合います。

サラリーマンが法人化すれば、日本社会におけるサラリーマンと自営業者との間の不公平感は一気に解消するでしょうし、一人ひとりのサラリーマンにも納税者意識が徹底されますから、民主主義にとっても健全な効果 が期待できます。企業経営上どのような影響があるかはわかりませんが、従来の日本的雇用関係を大きく変化させ、流動性のある労働市場の育成につながることは間違いないでしょう。

考えられる唯一の問題は、全国に5,000万社ものサラリーマン法人ができると税務署や社会保険事務所が機能しなくなることくらですが、そもそも赤の他人が稼いだお金を横から掠め取ろうというからには、それなりの手間とコストがかかるのは当たり前です。サラリーマンに対してだけ、これまでなんの苦労もせずに源泉徴収で済ませてきたこと自体が間違いだったのです。

それでもなおかつ税の徴収ができないというのであれば、思い切って所得税や住民税、年金、健康保険料の徴収をやめて、行政組織をスリム化したうえで、消費税だけで運営できる国家にすればいいでしょう。そうなれば、「公的なサービスは最小限でいいから税金はできるだけ安くしてくれ」という、非常に真っ当な社会が誕生します。

『ゴミ投資家のための人生設計入門[借金編]』より
2001年6月25日


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