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5. 郵便貯金を解約しよう!

郵便貯金を解約しよう!

国家というのは国民から税金を集め、インフラ整備(道路や上下水道)や社会福祉(年金や健康保険)など、さまざままかたちでそれを国民に再分配しているわけですが、日本という国には、税金の使い道を決める「予算」のほかに、「財政投融資(財投)」という不思議なお金が存在します。

この財政投融資は、郵便貯金や簡易保険で集めたお金を、大蔵省の資金運用部が特殊法人(道路公団や住宅金融公庫など)や第3セクター(地方自治体と民間企業の合弁で行なわれる開発事業)などに貸し付けて運用するもので、この国の公共事業を支える重要な柱になっています。

ところが、郵便貯金の金利が民間銀行よりも明らかに低いと、誰も郵便局にお金を預けなくなってしまうので、財投の原資がなくなってしまいます。財投の原資がなくなると、そのお金でなんとか生きながらえている赤字特殊法人や赤字第3セクターの経営が破綻し、それらの公共事業で生計を立てている地方の土建業者がバタバタと倒産し、街に失業者が溢れ、中央官庁お役人様が天下りする場所もなくなってしまいます。ついでに郵便局の経営も成り立たなくなりますから、これまでの郵政行政は崩壊し、地方の郵便局長の政治力で集票してきた自民党にも大打撃です。

ただし、郵便貯金の金利が民間よりもあからさまに高くなってしまうと、今度は民間銀行がつぶれてしまうので、その金利は民間銀行よりもちょっとだけ有利なように、微妙なさじ加減で設定されているわけです。簡易保険と民間の生命保険の関係も、これと同じです。

また、郵便貯金には「経営破綻」ということがありません。なぜなら、「不良債権」というものが原理的に存在しないからです。

郵便貯金は、たとえお金を貸した先の特殊法人が破綻しようが、第3セクターに事業が行き詰まって解散しようが、貸し出した元金と利息を確実に受け取ることができます。そういう場合は税金によって補填すべし、と法律で決められているからです。そのため、国鉄清算事業団に莫大な額の財投資金が投入され、回収が困難になっても、郵便貯金は何の問題もありません。その代わり、巨額の債務はそのまま国家会計に移され、たばこ税を増税したり、国鉄各社に追加出資を強制したりしながら、問題は先送りされていくわけです。

実質破綻した苫東開発をはじめとして、地方の第3セクターの大半は大きな赤字に喘いでいます。特殊法人の中にも、実際は何の活動もしていないものや、どうでもいいような許認可を生業にしているものや、住都公団のように民間との競争力を完全に失ってしまっているところがいくつもあります。そうしたところに貸したお金は戻ってはこないのですから、これらの不良債権は、いずれ税金によって補填されるに決まっています。

こうした大きな矛盾を解決するために、私たちは、

郵便貯金を解約しよう!

と提案したいと思います。郵便貯金や簡易保険にお金が貯まりつづけるかぎり、財投制度は維持され、特殊法人などに不明朗なお金が流れ、税金や社会保障費の負担増となって跳ね返ってくることは明らかだからです。

それをやめるのは簡単です。みんなが郵便貯金と簡易保険を解約して、財投の資金をなくしてしまえばいいのです。こうすれば、あっという間に財投制度は崩壊し、これまでの矛盾がすべて表面 化し、不必要な特殊法人や第3セクターはあらかた消えてなくなり、日本もずっと住みよい国になるでしょう。

*1998年2月執筆。小泉内閣になって、ようやくこうした問題が一般にも知られるようになった。郵便貯金や政府系金融機関(住宅金融公庫・国民金融公庫・中小企業金融公庫・商工中央金庫など)が存在する以上、日本の金融システムは正常化しない。この当たり前のことが政治課題になるまで、バブル崩壊から10年以上を要した。実現するまで、あと何年かかる?(2001/8/15)

『ゴミ投資家のためのビッグバン入門』の原稿に加筆
1998年4月25日


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