得する生活
How to Live a Profitable Life
マルチ商法に被害者はいない
たとえば、次のような儲け話があったとする。あなたは、話くらい聞いてみようと思うだろうか? もしもしそうなら、気をつけた方がいい。
(1)150万円出資して健康食品の販売代理店になれば、毎月12万円、1年で約150万円の配当がもらえる。実際の販売は親会社に委託するので、あなたは何もしなくていい。
(2)商品カタログの中から売れそうなものを選んで、広告費として1口5万円以上投資すれば、売れ行きに応じて、半年で最低20%の配当金が支払われる。あなたは広告費を出すだけなので、何もしなくていい。
(1)の儲け話で、沖縄の八葉物流という会社は約4万8000人から1500億円を集めた。
(2)の儲け話は、超ナルシストの社長がフィリピンで主演映画を撮り、「キムタクより有名な日本人になった」ことで話題を集めたジー・オー・グループで、こちらは約1万2000人から480億円を集めた。
ここでのポイントは、「あなたは何もしなくていい」ということだ。世の中には、「働かずに金を儲けたい」「仕事などせず楽して暮らしたい」という人間がいっぱいいる。マスコミは必ず、「被害者は高齢者や女性」と書くが、実際に働けない人は少数で、大半は「働かない」小金持ちだということは、知ってはいるが伏せている。この事実が表に出ると、「マルチ商法=悪」「被害者=善」という勧善懲悪の図式が崩れて、一般大衆にアピールする報道ができなくなるからだ。
この世でもっとも貴重な名簿のひとつは、間違いなく、働きたくない小金持ちの名簿である。これさえあれば、誰でもマルチ商法で100億円単位の金を集めることができる。
仕組みは簡単で、最初の人間に約束した配当を、次の人間から集めた金で払えばいいだけだ。なんの才覚も必要ないから、誰でもできる。
働きたくない小金持ちは、資産運用だけで生活していかなくてはならないので強欲である。最初は恐る恐る150万円出したとしても、実際に約束された配当12万円が振込まれるとすぐに欲を出し、「1500万円出せば、何もしなくても毎月120万円の儲けが出る。これなら、働かなくでも楽しく暮らせるじゃないか」と考える。こうして、有り金すべてを巻き上げられることになる。
マルチ商法を仕掛ける人間は、世の中にこんな人間がいっぱいいることを知っている。さらに、自分がやらなくても、いずれ誰かに騙され、有り金すべてを巻き上げられることを知っている。
そこで、彼らは考える。
「だったら、俺が身ぐるみ剥いだっていいじゃないか」
これが、マルチ商法の被害者と加害者の関係である。
世の中の仕組みは、新聞やテレビのニュースより、ちょっと複雑なのだ。