小富豪のための香港金融案内FAQ
香港の金融機関
Q6 香港の証券会社に口座を開いて、インターネットで株式売買を行なうことはできますか?
A. 香港の銀行は「三級制」をとっており、免許銀行Licensed Banks、限定免許銀行Restricted Licensed Banks、預金受入銀行Deposit Taking Companies(略称:DTC)に分かれています。このうちフルレンジの個人向けサービスを提供できる「免許銀行」は国内法人30行、外国法人150行前後が活動しています。香港の外国金融機関数は、ニューヨーク、ロンドンに次いで世界3位で、世界のトップ100にランキングされる銀行のうち80行以上が進出しているといわれます。
香港最大の金融機関はいうまでもなく香港上海銀行で、その行名からもわかるように、大英帝国の中国侵略の拠点である香港と上海の金融システムを管理するためにつくられた植民地銀行でした。香港の発券銀行でもあり、地元ではたんに「Hong Kong Bank」と呼ばれています。
香港上海銀行は香港返還を控えた1990年にイギリスに金融持株会社HSBCホールディングズを設立して自社の株式をイギリスに移転させ、アジアで得た利益をもとにイギリスの中堅銀行ミッドランド銀行を買収するなどしてヨーロッパ最大の金融グループとなりました。
香港上海銀行と並ぶ発券銀行であるスタンダード・チャータード銀行も大英帝国の植民地銀行で、香港のほか、インドやシンガポールなどアジア各地に支店網を展開、エマージング(新興諸国)市場に特化した金融機関として生き残りを図ろうとしています。
香港においては、外国の金融機関が免許を取得することは簡単ですが、域内に支店を開設してリテールビジネスを行なうことは厳しく制限されています。その中で、イギリス系の老舗2行を追ってリテールに参入したのが、シティバンク香港です。
香港上海銀行、スタンダード・チャータード銀行、シティバンク香港の3行はいずれも香港ドル口座のほかに外貨預金口座を持ち、海外からもアクセス可能なため、日本の個人投資家が香港に銀行口座を開設する場合は、このいずれかを利用することになると思います。このほかヨーロッパ系の大手・中堅銀行の多くが支店や事務所を開設しており、こうした外資系銀行は日本人を含む香港非居住者でも口座を開設することができます。
それ以外には、中国銀行や東亜銀行など、中国系・華人系の銀行があります。香港上海銀行、スタンダード・チャータード銀行と並ぶ発券銀行である中国銀行はその傘下に多数の地方銀行を従えて「中国銀行グループ」を形成しています。ただしこれらの銀行は香港居住者を対象としたビジネスをしており、外貨預金口座がなかったり外為業務に精通していないなど使い勝手はあまりよくありません。
A. 香港には銀行と証券の壁がなく、銀行口座を開設すれば株式・ファンドなどの投資商品の売買も可能になります(香港上海銀行では原則として日本人を含む香港非居住者の株式売買は不可)。香港の個人投資家の多くは銀行口座で株式投資をしており、地場証券やネット専業証券はあっても、個人向けの大手証券会社は存在しません。
香港上海銀行やシティバンク香港では香港ドル普通預金口座、当座預金口座、定期預金口座、外貨預金口座に加え、株式、ファンド、金投資などが一枚のステイトメントで管理できるので非常に便利です。当座預金口座を持てば香港ドルの個人小切手も発行されます(シティバンク香港では米ドル個人小切手も発行されます)。
大手銀行はどこもインターネットバンキングに対応しているので、日本から口座にアクセスし、送金や口座間振替、株式・ファンド売買の指示を出すこともできます。いちど口座をつくってしまえば、わざわざ香港まで行く必要はありません。香港の銀行の利便性は、ここ数年で急速に向上しました。
もちろん香港内の支店窓口で、日本と同様に入出金・送金などの手続きをとることもできます。日本円を香港ドルに両替して自分の銀行口座に入金したり、ATMから香港ドルの現金を下ろして銀行窓口や街の両替商で日本円に交換することも簡単です。
A オフショアの銀行は顧客に支店窓口に来てもらうことを想定していませんから、メールオーダーで口座を開設し、インターネットやテレフォンバンキングで残高照会や送金手続きを行ない、無料で発行されるデビットカードで世界中のATMから預金を引き出すことができます。
それに対して香港の銀行は地元の個人や法人顧客に支店窓口でサービスを提供するのが基本ですから、メールオーダーでの口座開設は認められておらず、ATMカードは発行されますがクレジットカードには手数料がかかります。
またオフショアバンクではドル、ユーロ、ポンド建てのデビットカードを持つことができますが、香港ではあくまでも基軸通貨は香港ドルであり、香港ドル当座・普通預金口座に残高がないとATMから現金を引き出すことはできません。他の通貨で現金を引き出す場合は、常に香港ドルから両替することになります。
A. 香港の銀行はオフショアバンクと異なり、地元の個人や法人顧客に支店窓口でサービスを提供するのが基本です。(日本の銀行と同じです)。
インターネットの暗証番号を忘れてロックさせてしまったり、ATMカードを紛失するようなトラブルが起きても、支店窓口で必要書類にサインするだけで簡単に解決します。しかしこれと同じことを日本から行なおうとするとかなりの手間と時間がかかることになります。
大手の某銀行を例にとれば、電話で面倒な話をするとすぐに「支店で手続きしろ」と言われるので、最初に「自分は日本にいて支店には行けない」と伝える必要があります。FAXやEメールを送っても面倒臭がって返事が返ってこないことがほとんどです。海外通話が制限されているので、伝言を頼んでも折り返し電話がかかってくることはありません。必要書類を取り寄せるのも一苦労です。
サインした書類を担当部署に送っても、どこかで行方不明になったり、放置されたりすることは日常茶飯事です。電話で担当者名を確認し、郵送時にさらに念押しの電話をするくらいでないと話は先に進みません。結果的に、香港に行って窓口で直接手続きをした方が安上がりということにもなりかねません。
こうした事態を避けるにはシンプルな使い方に徹するのがいちばんです。香港に限らず、海外ではルーティンワーク以外のことを依頼するとたいてい面倒なことになります。
香港の銀行に口座を開設するのは、少なくとも1〜2年に1回くらいは香港に行く人にお勧めします。そうすれば、日本からもっとも近いオフショア金融センターの魅力を十分に享受することができるでしょう。もしも香港に行く予定がまったくないのなら、非居住者向けに特化したオフショアバンクを利用する方がずっと効率的です。
A. 香港は銀行と証券の垣根がないので、銀行の投資口座で株式の売買を行なうのが一般的です。日本のようなリテール(個人投資家向け)の大手証券は香港には存在しません。香港最大の証券会社はジャーディン・フレミングですが、機関投資家向けの投資銀行業務が主で、個人投資家が株式売買のための口座を開くことはありません。
香港の金融街を歩くと、証券会社の周りに人々が集まって株式談義をしている姿をよく見かけます。ギャンブルとして株式売買をする投資家は、こうした地場証券を情報交換の場として利用しています。
Q6 香港の証券会社に口座を開いて、インターネットで株式売買を行なうことはできますか?
A 可能です。もっとも、現在では銀行の投資口座でインターネットの株式取引ができるので、わざわざネット証券に口座を開設する必要はとくにありません。
ただし、香港のネット証券には以下のようなメリットがあります。
1)銀行の投資口座よりも手数料が安い。
香港の場合、手数料自由化が日本よりも遅れたため、現在でも取引手数料は売買金額の0.25%とほぼ横並びです。ただしネット証券は手数料競争に突入しており、0.1〜0.15%の手数料で取引が可能ですから、香港株を頻繁に売買する人にとってはコストの削減が可能です。
2)香港株以外の株式が取引できる。
銀行の投資口座では原則として香港市場に上場している株式(H株やレッドチップスを含む)しか売買できません。それに対してネット証券の中には上海B株(米ドル建て)、深圳B株(香港ドル建て)、米国株などをインターネットで取引できるところもあります。
3)信用取引や空売りができる。
ハイリスクな取引を好む人は保有する株券を担保に融資に2.5〜3倍の融資を受けられるマージン口座を開設することもできます。また香港ではこれまで現物株の空売りは認められていませんでしたが、一部の証券会社で貸株による空売りもできるようになりました。
4)先物やオプションなどのデリバティブができる。
香港先物取引所に上場されたハンセン指数の先物・オプション、現物株先物・オプションをインターネットで取引できる証券会社もあります。
A 香港では、ファンドは銀行の投資口座を通じて購入するものと考えられています。地場証券やネット証券は株式しか扱わないことがほとんどです。
香港はオフショアファンドの東アジアの営業拠点となっており、大手ファンド会社の多くが支店や営業所を構えています。これらのファンド会社はファンドの直販を行なっているので、電話や郵便、インターネットを通じて申込むことも可能です。エージェントやFA(ファイナンシャル・アドバイザー)を通せば個人向けのヘッジファンドを購入することもできます。
海外ファンドに関しては『タックスヘイヴン入門』を参照してください。
A 香港には英米、欧州系の多くの生命保険会社が営業拠点を構えており、終身年金や死亡保険などは香港非居住者でも加入可能です。オフショア生保と呼ばれる投資型生命保険(変額保険の一種)も広く利用されています。
生命保険は、通常、エージェント(日本でいう生命保険販売員)やFAを通じて加入します。ただし保険会社の中には、日本居住者の保険加入を認めないところもあります。
海外生保に関する詳しい説明は『タックスヘイヴン入門』を参照してください。