海外投資を楽しむ会 TOPページ
 [TOP][AICについて][海外金融機関情報] [書籍案内]
spacer
World Financial Products Question and Answer 以下の広告はAICが推薦・推奨
しているものではありません。
世界の金融商品 Q&A
世界の金融商品Q&A


←前のQ&Aへ ↑一覧へ 次のQ&Aへ→

【Q-053】海外の生命保険に加入するのは法律に違反すると聞きました。本当ですか?

Answer

  日本の保険業法第186条1では、「日本に支店等を設けない外国保険業者は、日本に住所もしくは居所を有する人(中略)に係る保険契約を締結してはならない」、同じく186条2では、「日本に支店等を設けない外国保険業者に対して日本の住所もしくは居所を有する人(中略)に係る保険契約の申し込みをしようとする者は、当該申し込みを行うときまでに、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の許可を受けなければならない」とされており、この法令に違反して許可を受けずに保険契約の申込みをした場合は「50万円以下の過料に処する」(同337条)とされています。
  この法律をどのように解釈するかが、海外生保、オフショア生保に加入する際の大きな問題になります。

  186条1項に関しては、「正式な営業許可を受けた保険会社(保険業者)以外は、国内で営業活動をしたり、保険契約を締結したりしてはならない」ということですから、趣旨は明確です。したがって、もし日本国内で未認可の生命保険商品を販売している業者がいたとしたら、それは短期駐在の外国人ビジネスマンなど、日本国内の非永住者を相手に営業活動を行なっているということになります。
  この条文を拡張解釈して、「日本人が自らの意思で保険に加入したいと申し込んできた場合は、営業活動をしていないわけだから保険業法に違反しない」と述べる人もいるようですが、条文中に「保険契約を締結してはならない」と明記されていますから、これはやはり違法といわざるを得ないでしょう。ちなみに、186条1項に違反した場合は「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」(同316条)とされていますから、シャレでは済みません。

  ところで、この186条1項の規定は、日本国内でしか効力を持たないことは明白です。条文は無認可の外国保険業者に対する日本国内での保険契約締結禁止を定めていますが、国外で活動する保険業者にまでこの禁止命令を適用することはできません。
  たとえば、カナダにある保険会社がカナダの法律に従って合法的に日本人と保険契約を締結したり、香港の保険代理店が香港の法令に則って日本人と保険契約を結んだ場合、日本国が保険業法違反としてこれらの保険会社(保険代理店)を処罰することはできません。このことから、保険の加入者が日本の居住者であっても、日本国外(日本国の主権が及ぶ範囲外)で保険契約を締結した場合は、彼の地では日本国の法の効力が及ばないわけですから、契約を結んだ保険会社(保険代理店)は処罰の対象にならない、ということになります(当たり前です)。ときどき、カナダや香港などで日本人を対象として保険の販売をする業者に対し、違法行為をしているかのように言う人がいますが、これは大きな間違いです。

  そこで次に、186条2項が問題になります。186条1項は保険業者に対する禁止命令ですが、186条2項は保険加入者に対して、日本国内で認可されていない保険に加入する場合は事前に内閣総理大臣(!)から許可をもらうよう、定めているからです。この法律を条文どおりに解釈すれば、海外生保、オフショア生保に加入しようとする場合は、まず最初に日本国総理宛てに許可申請を出さなければなりません。
  この場合、対象となるのは日本の居住者ですから、日本国籍を有していても、海外勤務など、所得税法によって認められた日本の非居住者であれば、事前の届け出なしに海外生保、オフショア生保に加入しても問題ないということになります。しかし海外旅行者などは日本の非居住者にはなりませんから、たとえ海外で保険契約を締結したとしても、この規定を免れることはできません。

  立法の趣旨を考えれば、この法律自体が海外の生命保険会社が日本国内で無許可営業をすることを禁じるために制定されたものであり、日本人が海外に自ら出向いて保険契約を締結することまで想定していないことは明らかです。事実上、法律が形骸化しているわけですが、とはいえ法は法です。
  これまで日本の金融当局は海外生保、オフショア生保についての見解を公表したことがなく、また、実際に保険業法違反で保険加入者が処罰されたこともありません。
  ただそうはいっても、違法な行為を勧めるわけにはいきませんので、海外の保険会社との契約を考える場合は、こうした法的問題を理解したうえで各自ご判断ください。 <最終更新:2012/08/01>



お問い合せはこちら > お問い合せはこちら
本サイトの無断転載・複製を禁じます。リンクはご自由にどうぞ。
Copyright ©1999-2012 Alternative Investment Club.