出版物のご案内


海外投資実践マニュアル(7) 

アメリカ2 U.S.A.2


米国市場の基礎知識(2)

信用取引

アメリカの証券会社では現物株のみを取引する口座を現金口座Cash Account、信用取引のできる口座を信用取引口座Margin Accountと区別するが、信用取引を始めるにあたって特別な条件は必要なく、リスクに関する同意書にサインさえすれば誰でも簡単に信用取引口座が開設できる。

日本の証券会社では現物株口座と信用取引口座がはっきり分かれているが、アメリカでは両者は一体化している。信用買いにおいては、まず口座にある現金が有価証券の購入代金に充てられ、不足した分が証券会社から融資されることになる。決済時においても同様で、信用(融資)分から自動的に決済される。したがって日本の証券会社のように、現金を担保に建て玉したり、信用買いのポジションを残して現物株を先に処分することはできない。

ポジションは「買建玉」がロングLong、「売建玉」がショートShortで、Long Positionは購入した株式を売却することで、Short Positionは売却していた株式を市場から買い戻すことで決済される。

空売りをする場合は「Sell Short」、売建玉を決済する場合は「Buy to Cover」で注文する。「Buy」+「Sell Short」で両建ても可。

■Marginable SecuritiesとNon-marginable Securities

アメリカのブローカー業務は、連邦準備制度理事会FRB(the Federal Reserve Board)の「T規制Regulation T」によって規制・管理されている。そのT規制では有価証券をMarginable Securities(信用価値あり)とNon-Marginable Securities(信用価値なし)とに区別しており、Marginable Securitiesには以下の有価証券が分類されている。

1) All Listed Securities:全上場有価証券
2) Securities on the NASD's National Market System(NMS / NMM):ナスダックのシステムで取引される有価証券
3) OTC Securities on the FRB Margin List:FRBの信用リストに掲載されている店頭銘柄
4) Government and Municipal Bonds:米国債および地方債
5) その他、FRBおよびブローカーが認めたもの

通常、信用取引の担保となるのは、Marginable Securitiesに限定される。

■信用取引の最低維持条件

アメリカの取引所(NYSEやNASDAQ)では、信用取引におけるリスクを抑えるために、「最低維持額Maintenance Requirement」を採用している。この規制では、ブローカーや証券会社を通して行なわれる信用取引についてさまざまなルールを設定している。

1) ブローカーは口座残高が2,000ドル以下の口座に借入れを起こしてはならない。

2) 信用取引における借入額は、Initial Margin(委託証拠金)の50%までしか認められない。

「Initial Margin」とは、信用取引で注文を出す際に必要な「委託証拠金」で、現金と有価証券Marginable Securitiesの合計額。このInitial Margin(委託証拠金)が注文の約定金額の50%以上なければならない。すなわち信用倍率は最大で2倍。

3) 信用取引をするには、口座の総資産価値の25%以上のMaintenance Requirement(証拠金維持額)がなければならない。

「Maintenance Requirement」とは、保有するポジションを維持するのに必要な「証拠金維持率」のこと。相場の変動で証拠金が建て玉の25%を下回ると強制解約の対象となる。

 ただしこれはFRBが決めている最低基準なので、各証券会社の証拠金率は通常30〜40%に設定されている。それ以外でもさまざまな要素で証拠金維持率は変更されるので、信用取引の建て玉がある場合はオンラインで頻繁に確認する必要がある。

■マージンコール

相場の変動によって最低証拠金維持率を下回り担保割れを起こすと、新たなポジションをつくることができないばかりでなく、「マージンコールMargin Call」と呼ばれる「追証」が発生する。

マージンコールとはその名のとおり、証券会社からかかってくる電話のこと。米国オンライン証券会社の場合、マージンコールは、最初Eメールで連絡があり、その後、電話・郵便と状況は悪化する。

マージンコールの解消するには、現金を入金するか、保有している有価証券を処分して担保を最低証拠金維持率まで回復させなければならない。マージンコールを放置していると、証券会社は一方的に顧客のポジションを決済してしまう(この当たりの規定は日本と同じ)。

■Fed Call / Regulation T Call

「Fed Call」別名「Federal Call」「Regulation T Call」は先に紹介した「T規制」に関連しするもので、50%以上を借入れに頼って株式を購入した場合にEメールで通知が来ます。

Fed Callの有効期間は3日間で、現金を送金するか、保有しているポジションを解消して借入率を下げなけれならない。これに対処できない場合は、各証券会社がFEDに代わって清算手続きに入る。

12カ月以内に4回清算が行なわれた場合、「90日制限90-Day Restrictions」と呼ばれるさまざまな規制を受けることになり、それにも反した場合は口座が閉鎖されることもある。


[Home]|[INDEX]|[次へ]