Finding the Golden Feather of Wealth
How to Plan Intelligent Life
Introduction
人生は一度しかない。だから近道を行こう!
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本書の前半では、私たちのような平均的な日本人が人生を設計する際に必要となる基礎的な知識について述べています。どれも考えれば誰でもわかる当たり前のことばかりですが、不思議なことにほとんど知られていません。
後半は、国家とのつき合い方を中心に展開しています。
国家はあまりにも強大であり、個人の人生に大きな影響を及ぼします。同時に、万人が等しく政治に参加できる民主制のもとで、国家の制度は大きく歪んでいます。その歪みを上手に利用すると、合法的に近道することが可能になります。逆に、国家の負の側(ダークサイド)で人生を送ると、いたずらに回り道をしたり、貧困に身を落とすことになってしまいます。
国家は国民から税を徴収し、それを国民に再分配しています。日本の場合、国や地方を合わせた行政経費は年間に160兆円に及びます。これだけ巨額だと、ほんのわずかな歪みが、個人を幸福にしたり、不幸のどん底に突き落としたりします。人生を効率的に生きようとするならば、私たちは、国家との関係を真剣に考えてみなくてはなりません。
本書の最後に、「PT(Perpetual Traveler)=永遠の旅行者」の生き方を紹介しています。これは、国家と国家との間の歪みを利用して近道を生み出すよりラディカルな戦略です。PTは私たちに、国家に拘束されない究極の「自由」という新しい可能性を提示してくれます。
本書においては、人生における経済的側面のみを扱っています。
人生を経済的側面だけに限定すれば、その目標は、「経済的な独立Financial Independence」を獲得することと言えます。「経済的独立」とは、簡単に言えば、誰にも依存せずに人生を自由に設計するだけの十分な資産を持つことです。経済的に独立していないということは、気づいているかどうかにかかわらず、誰かの奴隷である、ということです。
自由な人生に価値を見出さない人にとっては、本書は無用の長物です。皮肉でも何でもなく、世の中には、奴隷の方が幸福だということはいくらでもあります。
最短距離で「経済的独立」に到達するためには、人生を効率的に設計する必要があります。これが、「近道」です。
近道を探すためには、私たち日本人の人生を根底から規定する政治的・経済的要因について知らなければなりません。私たちは好むと好まざるとにかかわらず、21世初頭という時代を日本人として生きるほかありません。その抗いがたい状況を無視して、人生を設計することなでできるはずはありません。
私たちをとりまく世界は、大きく歪んでいます。その歪みから、必然的に、得をする人と損をする人が生まれます。本書では、制度の歪みから生じる恩恵を「黄金の天使の羽根」と呼んでいます。
日本という国は、黄金の羽根を撒きながら堕ちていく天使に似ています。ベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終焉した後、日本は長い衰退の時代を迎えました。しかしその巨大な身体からは、いまでも大量の黄金の羽根が零れ落ちています。
こうした黄金の羽根は、国家だけでなく、株式市場や不動産市場など、経済活動をともなうすべての場所に落ちています。歪みのない完璧な制度など、どこにもないからです。
しかし、誰もがこの天使の黄金の羽根を拾うことができるわけではありません。羽根の枚数は限られており、うかうかしているとあっという間になくなってしまいます。
他人よりも早く黄金の羽根を見つけるためには、「知識」が必要です。
たとえばヘッジファンドでは、世界じゅうから数学や物理学、ロケット工学のノーベル賞級の天才を狩り集め、市場に存在する歪みから利益に得るために鎬を削っていると言われています。しかし人生を効率化するのに、こんな特殊な知識は必要ありません。
これから述べるように、ほんの少しの工夫で、人生は劇的に変わるからです。