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2. PTという人生

PTという人生

PTとはいったい何でしょう?

PTは「Perpetual Traveler(永遠の旅行者)」「Permanent Traveler(終身旅行者)」を略したもので、それ以外にも「Passing Through(通過)」「Parked Temporarily(一時滞在)」「Prior Taxpayer(納税者優先)」などの頭文字にも由来するようです。

日本でただ一人の「PT研究家」でファイナンシャルプランナーの木村昭二氏は、『税金を払わない終身旅行者—究極のPT節税法』(総合法令)でPTを次のように簡潔に定義しています。

「ある国の居住者になれば当然にその居住国で納税の義務が発生するので、合法的に納税義務が発生しないように6カ月や1年毎に居住を変えて税務上、どこの国の『居住者』にも属さない『終身旅行者』になるということ」

要するに、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパなどに複数の住居を持ち、ときどき日本に里帰りしながら、「滞在日が税務上、その国の『居住者』になり高額な納税義務が生じそうになったならば、合法的に別 の国に移り住み、またそこで滞在日数がその国の税務上『居住者』になりそうになったら、またまた合法的に別 の国に引越しをする」ライフ・スタイルを言います。

このようにPTは、各国の税制の違いを上手に利用しながら、100%合法的に、税金を払わずに生活する「究極の節税スキーム」なわけです。

日本の税法は裁量の幅が大きく、最後は税務当局の「推定」によって決められるため、一言で「これが非居住者だ!」とは言えませんが、おおよそ以下のようなケースなら、日本国籍を保有したままでも、非居住者として認められると思われます。

まず、日本国内から所得を得る仕事をすべてやめてしまいます(資産運用のみで生活するか、国外で仕事に就くということです)。そのうえで、国内に不動産を持っていれば、それも売り払ってしまいます(さすがに親の実家までは売却しなくても大丈夫です)。ついでに、国内にある金融資産もすべて海外に送金してしまいます。これで、日本国内には1円の資産もない上体になります。

そして、海外に家族で移住し(できれば不動産も購入し)、1年間は何があっても日本には戻ってきません。それ以降は、「日本に居所を有する」と認定されない範囲で、ときどき日本に戻ってくればいいわけです。

PTは国籍を捨てるわけではないので、海外生活に飽きたらいつでも日本に戻ってくることができます。もちろん、年金の受給権をはじめとした日本国民としてのさまざまな権利も失うことはありません。

厳密に言えばこれは、所得税法施行令15条の、「その者が再び国内に帰り、主として国内に居住するものと推測するに足る事実がないこと」という非居住者の規定に抵触しますが、ここは主観の問題なので、「そのときは海外に永住するつもりだったが、けっきょく日本に帰ってきた」と主張すれば、後は税務署との交渉次第でしょう。

PT生活を送る国を選ぶ基準としては、以下のようなものが考えられます。

1)「属人主義」ではなく、「属地主義」の国である。

属人主義というのは、自分の国の国籍(市民権)を持っている人からは、どこに住んでいるかにかかわらず(たとえ月や火星でも!)税金を徴収するという考え方です。したがって、属人主義の国の国民は、PTになることができません。このような過酷な税法を持つ国の代表がアメリカで、この国で市民権(グリーンカードでも)を取ろうものなら、世界中のどこにいても納税の義務を負わされるというトンデモないことになります。

したがって、アメリカのお金持ちはなんとかしてアメリカ国籍を捨てようとしますが、この世界一厳しい税法を持つ国では、仮に国籍を捨てても10年間は納税の義務を免れることができないというさらに恐るべき規定もあって、あらゆる節税の道が封じられています。日本人にもっとも人気の高い外国はハワイですが、残念ながらPT候補地としては適しません。

一方、属地主義は自国に居住している人(個人・法人)から税金を徴収するという考え方で、その国の国籍を有していても居住していない場合は課税の対象外になります。アメリカ、フィリピンなどの一部の例外を除き、世界のほとんどが属地主義の税法で運用されています。

2)長期滞在用のビザが取得できる。

観光ビザでPT生活をすることも理屈のうえでは可能ですが、30〜90日以内に出国しなければならない生活を続けていると、自分がPTなのか違法就労者なのかわからなくなってしまいます。少なくとも1〜2ヶ国、長期滞在者用のビザを取得しておく必要があります。

ただし、永住権や市民権までは必要ありません。下手に市民権を取得してしまうと、権利といっしょに義務まで付いてきますから、納税ところか、兵役に就かされても文句は言えません。

3)言葉が通じる。

まったくコミュニケーションが成立しない環境では、ふつうの人は、長期間暮らすことはできません。観光旅行で気に入ったからと、スペインや東南アジアに移り住んだ人も、多くはこの言葉の壁で挫折するようです。

4)日本から近い。

かつて、通産省が鳴り物入りで始めた「シルバーコロンビア計画」は、スペイン、オーストラリア、ニュージーランドなどのリゾート地を、定年退職者の海外での保養地として民間主導で開発することを目的としたものでしたが、このプランに応じてスペインに移住した人の多くが、言葉の壁に加えて、飛行機だけで片道15時間以上、日本との時差も8時間という「距離の壁」で挫折したとの報告があります。

最初は面白がって遊びにきてくれた友人や親戚たちの足も次第に遠のき、ほとんどの移住者が望郷の念にかられて日本に戻ってしまったのです。

5)治安がよい。

日本にいると当たり前のようですが、世界中に、夜中に若い女性がひとりで歩けるような国はほとんどありません。日本のように治安のいい国を選ぼうと思ってもなかなかむ難しいので、少なくとも、居住に適した治安のいい地域を選ばなくてはいけません。

6)物価が安い。

せっかく税金が安くなっても、物価が高ければ何もなりません。家賃が日本よりも高い香港などは、ビジネスにはいいかもしれませんが、PT生活にはあまり向きません。

7)不動産の取得が容易である。

その国の規定によって、外国人は不動産を所有できないように決められているところも多くあります。もちろん賃貸でPT生活を行なうこともできますが、安い価格で日本では考えられない豪邸が手に入るというメリットを生かしたいのなら、外国人でも不動産を取得できる国を選んだ方がいいでしょう。

8)気候がいい。

いくら節税のためとはいえ、PT生活が苦行になってしまっては意味がありません。そのためには気候がいい、食べ物がおいしい(日本食が食べられる)、リゾート施設(ビーチやゴルフ場など)が近くにある、などが条件になります。

「海外旅行といってもお仕着せのパックツアーではぜんぜん面白くない。ショッピング+グルメ+エンタテイメントという観光ガイドブックのコースも飽きてしまった」

そういう人でも、将来はここで暮らすかもしれないと考えて、不動産屋を回ったり、治安や環境、ビザのことを調べたりしてみれば、これまでにない体験ができるはずです。

ヒマだからどこかに出かけるのではなく、家族や恋人といっしょに、それぞれの人生設計をもとにPT候補地をめぐる旅行を計画してみてはいかがでしょうか?

*オリジナル原稿執筆時(99年8月)でも、タレントの大橋巨泉氏がPT生活をしていることは一部で有名でしたが、2000年4月に『巨泉 人生の選択』(講談社)がベストセラーになることで、広く知られるようになりました。巨泉氏は、夏はカナダ、冬はオーストラリア、春と秋は日本というサイクルで、税金を払わない非居住者の身分を確保していました。(2001年8月15日)

『ゴミ投資家のための人生設計入門』より
1999年10月25日


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