シンガポールのインターネット証券
フィリップ証券 Phillip SecuritiesおよびフィリップフューチャーズPhillip Futuresはシンガポールの大手金融グループ、フィリップキャピタルPhillip Capitalの系列金融機関。1996年にシンガポール初のインターネット取引システム「ポエムズ POEMS(Phillip's Online Electronic Mart System)」をスタートさせた。
フィリップグループはシンガポール以外に香港、中国、マレーシア、タイ、インドネシア、スリランカ、イギリス、フランスで事業展開しており、日本でも老舗証券会社の成瀬証券を子会社化して話題になった。
POEMSは証券と先物(+為替FX)を同一プラットフォームで取引できる先進的なシステム。証券とフューチャーズの両方に口座を開設し、口座を統合することで、株式、債券、ファンド、世界の先物、為替FX取引など多種多様な取引を実現した(「取引できる市場」参照)。
郵送でも口座開設可だが、電話での本人確認が必要
両会社とも、日本から郵送で口座開設が可能。ただしフィリップ証券とフィリップフューチャーズは別会社なので、それぞれ口座開設手続きが必要。申込書や必要書類も異なる。証券口座の最低預入額は5,000シンガポールドル、先物口座(フューチャーズ)は1万シンガポールドル。
現地に行って口座開設手続きすることもできる。両社はラッフルズシティタワー Raffles City Towerの6階と7階に本社を構えているので、同時に訪問すると便利。
現地で口座開設する場合は、パスポートと住所証明書となる発行3カ月以内の英文の残高証明書および最低預入額以上の現金または小切手があればその場ですべての手続きが完了する。
郵送で口座開設する場合、証券は口座開設申込書(+W-8BEN)、パスポートのコピー2部、住所証明書類、フューチャーズは申込書とパスポートのコピー、住所証明書類が必要になる。いずれも申込書の所定欄とすべての書類に行政書士などの認証が求められる。
口座開設申込書の受付け後に本人確認の電話がかかってくる。内容はパスポート番号と生年月日などを確認する簡単なもの。
日本語サイト、日本語サービスも充実
口座開設方法や取引ツールなども複雑に思えるが、現在は日本語サイトも用意されているほか、日本語によるサポートも充実している。口座の開設および一般的な取引においては、とくに大きな問題はないだろう。
口座は預託・決済方法で区別
フィリップ証券の口座は、決済方法や証券管理方法等の違いによってかなり複雑。大きく分けると、購入した証券をフィリップ証券に預託するか、シンガポール版の「ほふり(証券保管振替機構)」に当たる「CDP(The Central Depository Pte Limited=シンガポール証券中央預託機関)」に預託するかの違い。
前者には一般的な現物取引用口座の「信託口座 Custodian」と、信用取引用口座「マージン口座 Margin Trading」がある。マージン口座はシンガポール内に銀行口座を保有していることが条件。いずれも四半期ごとに信託手数料(シンガポール株の場合16.05シンガポールドル)が発生するが、配当の受取りなど必要な手続きはすべて代行してもらえる(四半期に1回以上の株式売買があれば信託手数料も無料になる)。
後者はシンガポール内の銀行口座にGIRO(シンガポール国内の送金システム)を使って送金するか、フィリップ証券に現金を預けて運用してもらう。証券はCDP(ほふり)に無料で保管してもらえる代わりに、売買のたびにフィリップ証券とCDPとの間で証券の移管が必要になり、手数料が発生する(1銘柄あたり21.40米ドル)。
これらのことからシンガポール非居住者の場合、多くの人が利用できるのはフィリップ証券に預託をする「信託口座 Custodian」ということになる。信託口座でも、「CFD(Contract for Difference)取引」と「Excess Funds Management Services(MMF)」を追加することができる。
なお、シンガポールのマージン口座は日本の信用取引とは異なり、保有する株式を担保に株の購入資金を融資するタイプでカラ売りは不可。CFDは為替FXと同じ差金決済取引で、カラ売りもできる。
「Excess Funds Management Services」は口座の預り金をMMFで運用するもの。元本保証ではないものの通常よりも高い金利が期待できる。
証券とフューチャーズの口座統合
フィリップ証券のオンライン取引ツールが「POEMS」だが、フューチャーズではPOEMSの上位バージョンの取引ツールがいくつか用意されている。テクニカル指標を表示できるものや自動売買システムもあるが、このうち無料で利用できるのが「POEMS Professional」。オプションのネット取引が可能で、日本語版も用意されている。
ひとつのプラットフォームで証券取引と先物取引を行なうには証券口座と先物口座を統合する必要があるが、そうするとフューチャーズの取引ツールが利用できなくなってしまう。日経225先物・オプションを取引する場合は「POEMS Professional」のほうが優れているので、口座を統合しないほうがいいだろう。
送金先は通貨ごとに異なる
口座への入金は、電信送金を利用する。証券口座は、シンガポールドル・米ドル・香港ドル・日本円。フューチャーズの場合はこれらに加えてユーロ・英ポンドでの送金が可能。それぞれ送金先口座が異なる。
送金手数料がもっとも安いのは、日本のシティバンク銀行からフューチャーズへの円送金。フューチャーズはシティバンクシンガポール Citibank Singaporeに円口座を持っているので格安の海外送金が可能(詳しくは「海外証券会社」【Q-011】、「海外証券会社」【Q-012】参照)。
フィリップ証券/フューチャーズから海外への送金は担当者宛に送金指示のEメールもしくはFAXを送ればいい。
証券口座と先物口座を併用するメリット
口座はどちらか片方だけ開設することもできるが、両方の口座を併用することで得られるメリットは大きい。
まず為替FXによって為替ヘッジができること。日経225ミニやS&Pミニを利用すれば、現物株の代わりにローコストでインデックス投資ができる。さらに、日本のシティバンク銀行からフィリップフューチャーズに送金された円資金は「FX Invest」で外貨に両替し、無料で証券口座に振り替えたり、DBS銀行などのシンガポール国内銀行に送金できる。
シンガポールの銀行口座と組み合わせる
フィリップ証券やフューチャーズを使いこなすには、シンガポール内の銀行口座と組み合わせるのがベスト。シンガポール国内に口座があればマージン口座も開設できるし、「EPS」と呼ばれるシンガポール国内の送金システムを利用して無料で入出金ができる。さらにはDBS銀行の口座と組み合わせれば、「Bill Payment(請求書払い)」サービスを利用して手数料無料で資金移動が可能になる。