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海外投資実践マニュアル(7) 

アメリカ2 U.S.A.2


米国市場の基礎知識(7)

ミューチュアルファンド

■ミューチュアルファンドは買える? 買えない?

Mutual Fund(ミューチュアルファンド)はオープンエンド型会社型投資信託で、ファンド会社がファンドごとに投資会社を設立し、投資家にその株式を販売すると同時に、投資家から買い取り請求があった場合はいつでも基準価額で買い戻すことを約束している。

会社型投信と対になるのが契約型投信で、投資家が受け取るのは信託会社が発行する証書(権利契約書)になる。会社型投信か契約型投信かはファンドのガバナンス(統治)の問題でどちらが優れているとはいえないが、いちばんの違いは日本の税制でその扱いが異なっていること。すなわち、会社型投信は投資会社の株式を売買するので一般の株式と同じ扱いとなり、契約型投信は金銭貸借契約の一種として債券と同じ扱いになる。

オープンエンド型と対になるのがクローズドエンド型の投信で、こちらは販売した投信をファンド会社が買い取らず、市場で売買される。ETF(上場型投信)は代表的なクローズドエンドの投資信託。

オープンエンドとクローズドエンドもどちらが優れているということはないが、一般的にはオープンエンドの投資信託はファンド会社の買戻し保証がついているので安心感があり、クローズドエンドの(上場)投信は個別株と同様に市場で売買できる便利さがある。ETFの場合、購入に必要なのは証券会社の売買手数料だけなので、販売手数料のかかる一般のファンドよりコストは安い。ただし取引量の少ないETFだと、買ったはいいが売れなくなる(あるいは不利な価格でしか売れない)リスクが生じる。

実は私たち日本人にとっては、オープンエンド(ミューチュアルファンド)とクローズドエンド(ETF)ではもうひとつ大きな違いがある。ETFは個別株と同じ扱いだからアメリカの証券会社を通じて自由に売買することができるが、ミューチュアルファンドは買えたり買えなかったりするからだ。これは、ミューチュアルファンドの海外販売がアメリカの法律のグレーゾーンにあり、SEC(証券取引委員会)が正式には認めていない(といって禁止しているわけでもない)ためだ。

その結果、ファンド会社によって米国非居住者への販売を認めるところと、認めないところで対応が分かれている。たとえばアメリカ最大手のフィデリティFidelityやヴァンガードVangardは、米国非居住者に対する口座開設を認めていない(9/11以降、同様の方針をとる会社が増えてきた)。

これは証券会社でも同じで、一例をあげれば、E*TRADEはルールを厳しく解釈して米国非居住者へのミューチュアルファンドの販売を行なっていないが、Firstradeはルールを広く解釈し(禁止されていないものは販売して構わない)米国非居住者に対しても門戸を開いている。もっとも、Firstrade扱うミューチュアルファンドのなかでも、ファンド会社の方針によって非居住者には販売できないものがありますから、事態はさらに複雑になってくる。

非居住者が買えるファンドかどうかについては証券会社内にリストが用意されているわけではないので、個別にファンド会社に確認するしかない。それぞれのファンド会社のホームページにSSN(米国納税者番号)が必要とか、アメリカ国内の住所が必要などと書かれていたら、米国非居住者には購入できない可能性がある。

■取引のルール

1)手数料

(1) 販売手数料

日本でも同じだが、ファンドを購入する場合は一般に3〜5%の「販売手数料Initial Charge」が必要(アメリカの法律で販売額の8.5%を超えてはいけないというルールがある)。この販売手数料は証券会社(ブローカー)に支払われる報奨金で、投資家にとっては純粋なコスト。

これに対して、ファンド会社がブローカーを介さず、販売手数料なしで投資家に直接販売するのが「ノーロード」のファンド。証券会社や銀行の場合、投資家の要望や質問に対応する投資アドバーザーの経費が必要なのでこうしたノーロードのファンドは取り扱えない。またブローカーを通じて販売しているファンドは、たとえファンド会社から直接購入しても、通常の販売手数料がかかるのがふつう(そうでなければ、誰もブローカーから買わなくなってしまう)。

一方、オンライン証券はアドバイザー業務を行なっていないので、通常のロード型ファンドと並んでノーロードのファンドも販売している。もちろんファンドのパフォーマンスは運用次第なのでノーロードのファンドが投資家にとって常に有利とは限らないが、同じような投資対象・運用方針のファンドであれば無駄なコストはできるだけ節約したいというのが本音だろう。

こうした矛盾を解消するために、現在ではロード型のファンドでも、販売手数料の徴収方法にさまざまな工夫をするようになった。一般的には、次の3種類がある。

・Front-end Load Fund:フロント・エンド型ロード・ファンド(A Share)

購入時に販売手数料を徴収する一般的なタイプで、販売手数料率が5%のA Shareファンドを1,000ドル購入すると、手数料として50ドルが差し引かれて残りの950ドルが運用に回されることになる。

・Back-end Load Fund:バック・エンド型ロード・ファンド(B Share)

A Shareの逆で、最初は投資額全額が運用に回されるが、解約時に手数料が差し引かれる。この場合、購入後1年以内に解約すると5%、2年以内なら4%、3年以内で3%と徐々に減額され、6年保有していると手数料無料になるというのが一般的。

・Level Load Fund:レベル型ロード・ファンド(C Share)

ファンドの購入や解約時に手数料が発生するのではなく、年間手数料として徴収されるもの。

同じファンドでA Share、B Share、C Shareが選択できるものもあるが、B ShareやC Shareにおいてもファンド会社からブローカーへは通常どおり販売手数料が支払われている。販売手数料をファンド会社が立て替え払いし、それを信託報酬のなかから回収していくわけだ(したがって通常、信託報酬はA Shareより割高になる)。

ファンドのコストの詳細はProspectus(目論見書)に記載されている。短期で売却する場合、長期で保有する場合でどのタイプの支払い方法が有利かは異なるので、事前にチェックしておこう。

信託報酬から販売手数料を支払うC Shareタイプのファンドでも、手数料が外に現われないことを利用してノーロード・ファンドのように装っているものがあるので注意が必要。ファンドのコストを考える場合は、販売手数料の有無だけではなく、信託報酬などの総コストで検討するようにしよう。

(2) 12b-1

ファンド会社が証券会社(ブローカー)に支払う手数料には、販売手数料のほかに、プロモーションや広告、資料の配布やマーケッティングなどに伴って発生する費用をカバーするためのものがあり、これを「12b-1」と呼ぶ(こうした手数料を認めた法令に由来した名前)。これは、ノーロード・ファンドであっても、発生することがある。12b-1は通常のファンドで年間0.75%、ノーロード・ファンドで0.25%が上限。

(3) 信託報酬

預かり資産に応じて運用会社が徴収するのが「Management Fees(信託報酬)」で、ファンドマネジャーの運用報酬や口座管理費用、有価証券の保管費用などファンドの運営費全般が含まれる。債券ファンドで1〜1.5%、株式ファンド1.5〜2%程度が標準。

ファンドが会社によってはファンドを運用部門と管理部門に分けて、口座管理費用Account Feesや保管費用Custodian Feesを別に徴収するところもある。

2)価格

ミューチュアルファンドの価格はファンドが保有する資産(株式や債券)の時価総額を発行株式数で割った1株当たりの純資産(BPS)で計算され、このファンドの1株当たり純資産を「NAV(Net Asset Value)」と呼ぶ(日本では「基準価額」)。オンライン証券会社でミューチュアルファンドを購入する際に提示される「Offer Price」は、NAVに1株当たりの販売手数料を加えた金額。

3)ティッカー

アメリカではファンドも株式同様にティッカーで管理される。ファンドのティッカーには規則があり、ミューチュアルファンドには最後に必ず「X」が付く。付いていないものはETFに代表されるクローズドエンド型ファンド。

4)最低投資額と追加投資額

ファンドはすべて個別に最低投資額と追加投資額が決まっているので、それ以下で購入することはできない。最低投資額は1,000〜3,000ドル、追加投資は500〜3,000ドルが一般的。

5)目論見書と運用報告書

各ファンドの特徴や手数料の詳細はファンド会社が作成する「Prospectus(目論見書)」に書かれている(これを簡単にまとめたものを「Key Futures」という)。また、過去の運用に関する情報は「Annual Report(年間報告書)」や「Semi-annual Report」でチェックできる。これらの取扱証券会社のホームページや各ファンド会社のサイトから入手可能。

6)配当

ミューチュアルファンドは通常、半期に1度決算され、配当が支払われる。配当を現金で受け取ることもできるが、とくに指示しなければ源泉徴収分を差し引いて自動的に再投資に回される。米国非居住者の場合、W8を提出することで配当課税は10%に軽減される。

■ファンドの検索

ファンドを購入する際には、投資のスタイルや対象、運用利回りなどの指標から、自分に合ったものを選択する。より詳細な情報や検索機能を利用したいのであれば、ファンド評価の草分けであるモーニングスターMorningStar社のサイトを利用するといいだろう。


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