小富豪のための上海<人民元>不思議旅行
目次
Introduction
不思議の国を体験しよう
2004年末に香港を訪れた時は、人民元投資の話題で持ちきりでした。アメリカやヨーロッパ、東南アジア諸国、もちろん日本でも人民元切り上げの時期は大きな関心を集めています。
世界じゅうの投資家が人民元に夢中になるのは、それがノーリスクハイリターン(ミドルリターン)のめったにないチャンスだと考えられているからです。
人民元は管理通貨であり、1ドル≒8.3元で米ドルと固定され、貿易など実需に基づかない資本取引は厳しく規制されています。年率10%近い経済成長と大幅な貿易黒字によって人民元の実力は上がっていますが、それとは逆に、中華人民共和国成立後、人民元はほぼ一貫して切り下げられてきました。その結果、人民元は明らかに割安になっており、近い将来の切り上げは不可避とされています。
外貨投資にはリスクが伴いますが、人民元が切り下げられる可能性はゼロに近く、対米ドルでは損をする恐れはありません。時期はともあれ切り上げが間違いないのであれば、人民元を持っているだけでなんのリスクもなく儲かるという夢のような話になります。その結果、華僑を中心に世界じゅうから投機マネーが中国に流れ込み、その資金が中国国内の設備投資や公共事業に回り、経済が過熱し、インフレを引き起こし、人民元切り上げを催促するという循環が起きているのです。
とはいえ、本書は人民元で大きな資金を運用しようと考えている投資家のためのものではありません。少額の資金で中国国内に人民元口座を開設し、中国の為替自由化という歴史的イベントに参加してみよう、というのが私たちの提案です。
中国では、外国人旅行者でもパスポートさえあれば簡単に銀行口座を開くことができます。中国銀行の場合、最低預金額は1元で、人民元のほか、米ドル、ユーロ、日本円、香港ドルなど複数の通貨で運用できるマルチカレンシー口座が同時に開設されます。定期預金口座を開くと、それもやはりマレチカレンシーになっています。このあたりは、日本の銀行よりもずっと国際化が進んでいます。
中国の国内銀行に口座を開設すると、ATMカードが発行されます(本書執筆時点では、外資系銀行にはATMカードの発行が認められていません)。クレジットカードの普及が遅れている中国では現金決済が主流で、都市部であればどこで銀行の支店やATMを見つけることができます。人民元建てのカードを持っていると、中国全土のどの銀行のATMでも現金を下ろせるので、広い中国を旅行する時にはとても便利です。
2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博を目指して、13億の民を擁する中国はさらなる経済発展に突き進もうとしています。もちろん、そこには国内所得格差や不良債権問題、環境破壊など、難問が山積していることも確かです。東京オリンピックや大阪万博と重ね合わせ、夢のような高度成長が約束されていると楽観できるわけではないでしょう。だがそれでも、21世紀において中国が世界最大の市場に成長していくことは間違いありません。
現在は人民元から外貨への再両替禁止(両替後6カ月以内であれば可)など、多くの規制がかけられていますが、いずれ資本取引規制は撤廃され、人民元と外貨の交換はもちろん、海外の投資家が中国国内の証券会社に口座を開き、人民元建てで株式や債券、ファンドに投資できる日もくるでしょう。金融ビッグバンから7年を経ても、いまだに外国人が銀行口座ひとつ自由につくれない日本はあっという間に追い越されてしまうかもしれません。
さあ、あなたも最先端と伝統の混在する不思議の国の銀行を体験してみませんか?
海外投資を楽しむ会