得する生活

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覚醒剤を合法化しよう

   我が国では覚醒剤は違法であり、法的にも社会的にも厳しく罰せられる。覚醒剤を使用すると「人間やめますか?」と問い詰められ、覚醒剤中毒者(シャブ中)は人間以下の扱いを受けても文句は言えない。 警察の精力的な取締りの結果、今や留置場や拘置所、刑務所は覚醒剤中毒者で溢れている。日本国は莫大な国費を投じて、彼らに食事と寝る場所を提供している。

 覚醒剤中毒者は、生活に困ると覚醒剤を持って交番に出頭する。いくらバカバカしいと思っても、警官は目の前の犯罪を見逃すことができない。その場で現行犯逮捕され、しばらくは税金で養ってもらえる。

 覚醒剤事犯は急増しており、現場の警察官はその処理に忙殺されている。警察が瑣末な犯罪に振り回されているうちに、強盗や殺人などの重大犯罪の検挙率が低下してきた。
覚醒剤は重罪なので、いったん送検されれば、検察は犯人を裁判にかけなければならない。裁判所は国選弁護人をつけて裁判を開き、審理を行ない、判決を下す。その間の検察官や裁判官の人件費はもちろん、国選弁護人の費用まですべて税金で賄われる。

 逮捕、留置、検察送致、拘置から裁判へと、法治国家では、一人の人間を裁くのにきわめて面倒な手続きを必要とする。その間、本人は三度の食事をあてがわれ、留置場や拘置所でのんびりと暮らしている。

 覚醒剤は初犯以外、執行猶予をつけることができない。犯人を刑務所に送ると、何年にもわたって税金で面倒を見なければならなくなる。これでは、かたちを変えた生活保護と同じだ。

 こうした問題を解決する方法はひとつしかない。覚醒剤を合法化すればいいのだ。

  あなたは「覚醒剤合法化」を暴論と思うだろうか?実はこれは、ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のゲーリー・ベッカー教授が主張し、アメリカで大論争を巻き起こした「麻薬合法化論」を翻案したものだ。

 ベッカー教授によれば、合法な麻薬である酒や煙草と、違法な麻薬とを区別する医学的根拠はどこにもない。

 酒や煙草の中毒性が一部の麻薬より強力なことはよく知られている。酒はアルツハイマー病と、煙草は肺ガンとの因果関係が指摘されている。教授の指摘するように、「アルコール乱用は、コカインとマリファナとヘロインをすべて合わせたものよりはるかに社会的に有害である」し、「酔っ払い運転、および職場や家庭での酔っ払いから被害を受ける罪のない人びとのほうが、麻薬の影響下で運転したり仕事をしている人たちから被害を受ける者よりはるかに多い」のだ。

 麻薬を合法化すれば末端価格が下がり、麻薬使用は拡がるだろうが、その一方で麻薬がらみの犯罪は大幅に減ると予想される。一杯の酒や一箱の煙草のために強盗や殺人に手を染める中毒者はいない。麻薬が犯罪と結びつくのはその中毒性に理由があるのではなく、値段が高価で入手が困難だからだ。

 麻薬中毒者の数が増えることを心配する人もいるだろう。しかし病的な依存症の原因は精神的外傷や過度のストレスであり、彼らは麻薬が手に入らなければ、深酒などの他の有害な行動に走るだけだ。麻薬を合法化すれば他の依存症が減り、結果として、社会全体の中毒者数に大きな変化はないとの予測もある。

 酒や煙草と同様に麻薬に課税すれば、国の税収は大幅に増える。その一部を使って、中毒者の治療施設を充実させることもできるだろう。現在は、禁酒法時代と同じく、本来ならば国庫に収まるべき麻薬取引の莫大な利益が非合法組織の手に渡っている。麻薬合法化によってその利益を取り戻し、無駄な社会的コストを抜本的に削減すべしというのがノーベル経済学賞受賞者の主張である。 


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