Money Laundering
by TACHIBANA Akira
TOUR in HONG KONG
17.ヴィクトリア・ピーク2
ヴィクトリアピークの展望台は、いつもよりも閑散としていた。
ロープウェイの起点になる中環が大混乱に陥っているためだ。店のスタッフたちも、みんなテレビ画面に齧りついている。
そんな中、麗子は展望台の端に頬杖をついて、ぼんやりと街を眺めていた。
たとえ何人の人間が死のうとも、昨日と同じ今日があり、今日と同じ明日が来る。
なにも、世界が終るようなことが起きたわけじゃない。
秋生は、麗子の隣に立った。
「やっぱり来てくれたのね」振り向きもせずに、麗子は言った。「うれしいわ」
ヴィクトリア・ピークからセントラルを眺める