illustrated Guide to Join Global Markets
あとがき
海外投資を楽しむ会(AIC)」は1998年5月に発売された『ゴミ投資家のためのビッグバン入門』の制作スタッフを中心に、翌99年に、当時は未体験の領域だった海外金融機関との取引に挑戦する個人投資家の情報交換の場としてインターネット上に設立され、2008年に10周年を迎えました。
会員数は本書発売時点で1万6,000人を超え、海外投資の情報サイトとしては日本最大規模にまで成長しました。
「黄金の扉」シリーズは、海外投資を楽しむ会設立10周年企画として、これまでつちかってきたノウハウを1冊にまとめたものです。既刊の『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(橘玲著)が「理論編」だとすれば、本書はその「実践編」に当たります。
本書では、個人投資家が機関投資家やヘッジファンド、プライベートバンクをも上回る投資の選択肢を手にした“金融2.0”ともいうべき大変化を読者が体験できるよう、ETFやADR/GDR、海外市場のデリバティブなど最先端の金融商品の詳細なリストとともに、その取引方法を具体的に紹介しています。この1冊があれば、いま資産運用の世界で何が起きているか、その全貌をつかむことができるでしょう。
本書で提案している世界市場ポートフォリオは、分散投資の効用を証明したモダンポートフォリオ理論の知見(ポートフォリオに異なる資産を組み込むことでリターン/リスク比率が向上する)と、波風や暴風雨はあるとしても長期的には世界市場は拡大するという予想に基づいています。
2007年夏に端を発したサブプライム問題で市場の動揺はつづいていますが、毎月一定額を世界市場ポートフォリオに投資する積立型(ドルコスト平均法型)の資産運用を行なうのであれば、株価の下落は投資単価を引き下げる格好の機会を提供してくれます。
当たり前の話ですが、割安なときに買わなければ利益は得られません。
そのうえ世界市場ポートフォリオは、個別株投資とちがって、人類が滅亡しないかぎり資産価値がゼロになることはありません。 ポートフォリオのメンテナンスに必要な時間は1カ月5分程度(給料日に決まった銘柄を買うだけ)で、株価の騰落に一喜一憂することもなくなり、時間管理上も精神衛生上もきわめて優れた投資法です。
パフォーマンスだけならこれを上回る投資法が存在するかもしれませんが、時間コストやストレスを加味した総合力では圧倒的な優位性を持っています。唯一の欠点は「面白くない」ということですが、人生の楽しみは投資以外にもたくさんあります。
経済のグローバル化と情報通信技術の急速な進化によって、金融の世界に国境はなくなりました。個人の資産運用も、日本という閉鎖された島国の内側にとどまっている理由はありません。
これまでほとんどの日本人はマイホームという不動産投資以外に“資産運用”を行なってきませんでしたが、定年後は誰もが一人の投資家として資本市場から利益を得るほかありません。そのときに“投資のプロ”を名乗る人たちが持ち歩く商品を喜んで買っているだけなら、ネギを背負ったカモになるだけです。
銀行や証券会社が勧めるのが優れた商品である保証はありません。あなたの資産運用について真剣に考えているのは、あなたしかいません。だったら日本という枠にとらわれず、世界中の市場から自分のポートフォリオにもっともふさわしい金融商品を探してくればいいのです。
本書が、そんなオルタナティブな(もうひとつの)資産運用のきっかけになれば、これにすぐる喜びはありません。
この10年間、私どもの活動を支えてくださった読者・会員の皆さまに感謝するとともに、新たなる10年に向けて、さらなる旅を共に続けたいと考えております。
2008年7月吉日
海外投資を楽しむ会