Finding the Golden Feather of Wealth
How to Plan Intelligent Life
長者番付の論理
シェークスピアの『ベニスの商人』を引くまでもなく、「金持ち=悪、貧乏=善」というのは世に広く流布するテーマです。社会主義思想に感化された戦後日本のリベラリズムにもそれは色濃く漂っています。
毎年国税庁は、「長者番付」として、申告納税額1,000万円以上の高額所得者名簿を公表しています。これは明らかなプライバシー侵害ですが、自由と人権をなによりも尊重する日本のリベラルなマスメディアは、犯罪者並みの扱いでこれを毎回、実名報道しています。
この長者番付の詳細なリストは、マスコミが絶賛する情報公開制度によって名簿業者の手に渡り、悪徳商品先物業者や怪しげな金融業者、詐欺やネズミ講の格好の商売道具になっています。しかし、情報公開制度の最大の受益者がこうした悪徳業者であることも、それによって多大の被害が発生していることも報道されることはありません。
国税庁には、無断で実名を公表された高額納税者から多くの苦情が寄せられています。これが個人のプライバシーを侵害していることは否定できませんから、国税庁としては、「公共の利益」を盾にするほかありません。「長者番付の公表をやめれば脱税を助長する」というのが、国税庁の主張です。
一見するとわかりにくいこの理屈は、次のような意味のようです。
1)長者番付を公表し、マスコミが大々的に報道すれば多くの人の目にとまる。
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2)自分の知合いで羽振りのいい暮らしをしている人が、なぜか長者番付に載っていない。
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3)不思議だと思って税務署に問合せる。
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4)その情報をもとに税務署が調べると、脱税が発覚する。
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5)こうした「密告制度」の存在が周知されると、正しく申告して長者番付に名前を載せた方が得だと考えるようになる。
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6)こうして脱税が減り、公共の利益に資することになる。
国税庁の認識によれば、日本の税収は一般大衆の陰湿な嫉妬によって支えられていることになります。
最近では、有名人の脱税はエンタテイメントとしてワイドショーや週刊誌で大きく報道されます。ついでに、「国民大衆に娯楽を提供することで公共の利益に資する」という理由も付け加えた方がいいかもしれません。
ところで、ワイドショーを見て有名人の脱税に怒りを感じている視聴者の多くは、1円の税金も払っていない専業主婦です。その一方で、多額の脱税をした人は、それでも平均な日本人よりはるかに多くの税金を払っています。
「公平な報道」を旨とするならば、こうした事実も正確に伝えるべきでしょう。