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海外投資実践マニュアル(7) 

アメリカ2 U.S.A.2


米国市場の基礎知識(4)

ADR

ADRはAmerican Depositary Receiptsの略で、「米国預託証券」と訳されるように、「アメリカで取引されている、世界各国に預託された株式のレシート」のこと。アメリカの金融機関が海外市場で購入した株式を預託機関であるアメリカの銀行や信託銀行に預けて、これを担保にレシートADRを発行し、通常の株式と同様に米国市場で売買できるようにしたもの。

ADRの特徴のひとつは、原株何株分を売買単位(1ADR)にするかを自由に設定できること。たとえば、日本ではトヨタ自動車の売買単位は100株だから、株価を5,000円とすると最低投資額は50万円になる。一方、ニューヨーク市場のTOYOTA MOTOR COP.(TM)株は、アメリカの個人投資家が売買しやすいよう2株を1ADRとしている。したがって、最低投資額は日本円で1万円、米ドルで100ドル前後となり、少額から無理なくトヨタの株主になることができる。

ADRでは1株を分割することも可能。たとえばNTT(NTT)株は1ADR=0.005株に分割されているので、株価が1株50万円であっても、ADRなら2,500円程度から投資できる。

ADS(American Depositary Shares)は「米国預託株式」と訳され、証書Receiptの代わりに実際の株式Shareを売買するもの。ただし実務的には、ADRとADSは同じものと考えていい。

なおADRやADSはミニ株と同じで、配当は受けられますが議決権はない。

■ADRで買える日本株

現在、NYSE、NASDAQに上場している日本企業は下記のとおりです。(カッコ内はティッカー。その後の数字は原株の分割比率)。

NYSE
・アドバンテスト(ATE)4:1
・キヤノン(CAJ)1:1
・日立製作所(HIT)1:10
・ホンダ(HMC)2:1
・コナミ(KNM)1:1
・クボタ(KUB)1:5
・京セラ(KYO)1:1
・松下電器(MC)1:1
・東京三菱UFJ(MTU)1000:1
・日本電産(NJ)4:1
・NTT(NTT)200:1
・日清食品(NIS)1:2
・野村證券(NMR)1:1
・NTTドコモ(DMC)100:1
・オリックス(IX)2:1
・パイオニア(PIO)1:1
・ソニー(SNE)1:1
・TDK(TDK)1:1
・トヨタ(TM)1:2

NASDAQ
・フジフィルム(FUJIY)1:1
・インターネットイニシアティブ(IIJI)400:1
・キリンビール(KNBWY) 1:1
・マキタ(MKTAY)1:1
・ミレアホールディングス(MLEA)200:1
・三井物産(MITSY)1:20
・NEC(NIPNY)1:1
・ニッサン(NSANY)1:20
・三洋電機(SANYY)1:5
・ダイエー(DAIEY)1:2
・トレンドマイクロ(TMIC)1:1
・ワコール(WACLY)1:5

■ADRで世界の優良銘柄に投資する

ADRの魅力は日本株だけに限らない。HSBC(HBC)やノキア(NOK)、ダイムラー・クライスラー(DCX)などのヨーロッパの優良企業、大企業もこぞってニューヨーク市場にADRを上場させている。

ここ数年、注目されてきたのが、BRICSなどの新興国銘柄にADRを通じて投資する方法。たとえばインド市場に投資したいと考えても、インド政府は現在のところ外国人投資家の株式市場への参加を認めていないので、手数料を払ってインド株ファンドを購入するしかない。さらに、ロシアのように外国人の直接投資が可能な地域であっても英語での情報は限られており、どの銘柄に投資すればよいのかを判断するのは容易ではない。それがADRであれば、アメリカの証券会社で簡単に売買できるうえに、ADR上場の際にはSECの基準をクリアしている必要があることから、決算内容も比較的信頼できる。日本のADR銘柄を見てもわかるように、アメリカ市場には「国際優良銘柄」と呼ばれる企業の多くが名を連ねている。

預託機関のひとつであるバンク・オブ・ニューヨークBank of New York(BONY)のホームページでは、企業名からティッカーを検索できるだけでなく、国、地域、業種やパフォーマンス、売買高でもADR銘柄のスクリーニングが可能なので非常に便利。


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