小富豪のための上海<人民元>不思議旅行
Q&A 人民元の基礎知識
Q8 口座開設するなら、国内銀行と外資系銀行のどちらがいいのでしょうか?
Q12外貨を持ち込んで人民元に交換する場合、なにか制限はありますか?
Q13日本から中国の金融機関に送金する場合、なにか制限はありますか?
Q15中国から人民元を持ち出す場合は、どんな制限がありますか?
Q16中国国内の金融機関から中国外に送金することは可能ですか?
Q17ATMカードを使って、人民元預金を海外で引き出すことはできますか?
A1 人民元Renminbiは中国人民銀行が発行する通貨で、略号はRMBあるいはCNY(Chinese Yuen)。元(ユエン/クァイ)、角(ジャオ/マオ)、分(フェン)があり、1元=10角=100分。
紙幣・硬貨ともに、1987年に発行された第4版と、建国50周年を記念して1999年10月に発行された第5版が混在して使用されています。第5版の紙幣は100元、50元、20元、10元、1元の5種類で、どれも毛沢東の同じ肖像が使われています。第4版には100元、50元、10元、5元、2元、1元、5角、2角、1角、5分、2分、1分の12種類の紙幣がありますが、少額紙幣を目にすることは稀です。
硬貨は1元、5角、1角、5分、2分、1分の6種類で、1元と1角には2種類のデザインがあります。
人民元は中華人民共和国成立後、米ドルに対して実質的に固定(ペッグ)されてきました。その公定レートは、当初は大幅に割高で、1980年代の改革解放の時代には、公定レートのほかに貿易決済用の内部調整レート(後に外国為替調整レート)を別に定める二重相場制を採用せざるを得ませんでした。
81年時点では1ドル=1.704元だった公定レートは、調整レートに引きずられるかたちで徐々に引き下げられ、94年1月に公定レートと調整レートが一本化され、管理変動相場制に移行する際に1ドル=8.7元となりました。その後、97年のアジア通貨危機を経て、現在は1ドル=8.28元でほぼ固定されています。
A2 中国政府は、人民元を貿易などの経常取引(実需取引)と、為替投機や株式投資などの資本取引に分けて管理しています。
経常取引に関しては、96年のIMF8条国加盟をもって自由化が完了したとされています。現在では、中国への輸出で受け取った人民元を外貨に交換することも、中国国内企業が輸出代金を外貨で受け取ることもできます。ただし、外貨集中制によって、中国国内企業が受け取った外貨は、原則外国為替取扱指定銀行に売り渡すことが義務づけられています。
貿易など実需の伴わない資本取引は規制が多く、人民元と外貨の交換は外貨管理局(中国人民銀行の外局)の許可が必要とされ、外国人投資家による人民元建ての株式投資も原則として認められていません。
ただし、外貨から人民元への規制は比較的緩く、海外から送金した多額の外貨を不動産投資などの目的で人民元に交換することはほぼ制限なく認められています。それに対して、いったん両替した人民元を、実需取引以外の名目で再度外貨に交換することは原則としてできません。
これは、国内投資を奨励すると同時に、国内資産の海外流出を強く警戒しているためです。為替取引を実需のみに制限していることで、外国為替市場での人民元の取引高はきわめて少なく、それによって政府による為替相場のコントロールが可能になっているのです。
A3 人民元の金利指標としては、中国人民銀行が決定する公定歩合と基準金利があります。
公定歩合は人民銀行が銀行に資金を貸し出す際の金利で、アジア通貨危機の1998年以降、一貫して引き下げられてきましたが、2004年に入って金融引き締め政策に転じ、3月に従来利率を0.63%引き上げ、3.33%(期間20日以内)〜3.87%(同1年)とされました。
一方、基準金利は一般銀行が人民元の融資や預金に適応する金利で、こちらは2004年10月、基準となる1年物貸出金利が 0.27%引き上げられて 5.58%に、1 年物預金金利が 0.27%引き上げられて2.25%となりました。同時に、貸出金利の上限規制が撤廃され、それぞれの銀行が貸倒リスクに応じて自由に金利を設定できるようになりました。
なお、中国人民銀行は中国の中央銀行ですが、先進諸国のような独立性はなく、中央政府の一部局として扱われています。中央銀行はたんなる執行機関であり、金融政策はすべて中国政府が決定しています。
A4 もっとも簡単なのは、人民元の現金を保有することです。日本で人民元紙幣を手に入れることは現実的ではありませんが、香港では街の両替商で簡単に外貨と人民元を交換してくれます。こうした人民元は中国本土内からの旅行者が持ち込んだもので、香港では、人民元切り上げを見越し、大量の人民元が現金のかたちで退蔵されていると言われています。
もうひとつの方法は、中国国内の金融機関に人民元口座を開設し、人民元預金をすることです。中国では旅行者でも簡単に銀行口座を開設することができます。
また香港ID保持者に限り、2004年1月から香港内の金融機関で人民元口座が開設できることになりました。1日の交換可能額は2万元(約26万円)ですが、人民元から香港ドルへの両替も可能です。中国国内の金融機関では人民元から外貨への両替は原則として認められませんから、これは大きなメリットですが、香港に知り合いがいる場合は別として、私たち日本人には現実的な方法とは言えないでしょう。
A5 社会主義経済を採用していた中国では、金融機関は中国人民銀行一行しかありませんでした。
1980年代の銀行改革で、中国人民銀行から中央銀行以外の業務を分離し、中国銀行(外貨取引業務)、中国建設銀行(建設関連融資)、中国農業銀行(農業関連融資)、中国工商銀行(商業銀行業務)が生まれました。さらに、1995年に政策金融業務を行なう中国発展銀行、農業発展銀行、中国輸出入銀行を設立し、四行の専門銀行を商業銀行として改組しました。これが「四大国有商業銀行」で、中国の全金融取引の6割を占めるなど、きわめて大きな影響力を持っています。
地域ごとの株式制銀行も1980年代から認可されるようになりました。現在は11行の株式制商業銀行がありますが、株式制とはいえ、ほとんどが地方政府や国有企業の所有です。
国有商銀や株式制商業銀行以外では、都市レベルで業務を行なう城市銀行、日本の信用金庫や信用組合にあたる都市信用合作社、農協系金融機関にあたる農村信用合作社などがあります。
外資系金融機関の参入規制は依然として厳しく、HSBC(香港上海銀行)やシティバンクなどのグローバル金融機関も、上海などのの主要都市でほそぼそとリテール業務を行なっているのみです。
A6 現在では、中国国内のどの銀行であれ、外国人旅行者がパスポートひとつで口座を開設することができます。ただし、一般の支店ではほとんど英語が通じないため、中国語で意思疎通できる場合は別にして、英語を話す銀行員のいる上海や、香港から近い深圳で口座開設するのが一般的だと思います。
外資系銀行の中国国内の支店は外国人顧客の利用が多いため、どこでも英語が通じます。ただし現在は、外資系銀行の人民元業務は、上海、深圳、天津、青島など一部の地域で認められているにすぎません。
A7 中国国内の銀行であれば口座開設はどこでも可能ですが、中国全土に支店網を展開していること、米ドルやユーロ、日本円を含むマルチカレンシーの口座があること、外国送金に比較的慣れていること、などから、外為業務を行なう中国銀行で口座をつくるのが一般的です。
中国の国内銀行は直轄市や省ごとに独立しており、同じ中国銀行でも、上海で開設した通帳を使って深圳の窓口で入出金することはできません(ATMでの出金は可能)。同様に、トラブルその他で銀行の窓口を訪ねる場合は、必ず、口座開設した省内の支店に行く必要があります。インターネット・バンキングのシステムも省(市)ごとに異なっており、銀行名は同じでも、省が異なれば別の銀行と考えたほうがよいでしょう。
外資系銀行であれば上記のような問題はなく、上海で入金した現金を深圳の窓口で出金することもできます。中国国内でもっとも積極的に営業拠点を展開しているのはHSBC中国なので、外資系銀行を利用する場合は、HSBC中国のいずれかの支店で口座開設することになるでしょう(ただし支店人民元を扱える支店は限られます)。
Q8 口座開設するなら、国内銀行と外資系銀行のどちらがいいのでしょうか?
A8 これは一長一短あって一概には言えません。
国内金融機関を保護するため、外資系金融機関にはいくつかの制約が課されています。そのため、2005年3月時点では、外資系銀行はATMカードを発行することができません(本年中に解禁されるとの予測もあります)。外資系銀行の人民元口座に預金があっても、現金をATMから引き出すことができないのです。
それに対して、国内銀行に口座を開設すると、その場でATMカードが発行され、国内金融機関のネットワーク銀聯を通じて、中国のどこでも、どの銀行のATMからでも現金を引き出すことができます。中国国内旅行などでATMを利用したい人は、現時点では、国内銀行に口座をつくりATMカードを入手するしかありません。
一方、外資系金融機関は外国人の顧客が多く、窓口、テレフォン・バンキング、インターネット・バンキングのやり取りがすべて英語で行なえます。口座はステイトメント(取引明細)方式で管理されるため、定期的に日本までステイトメントを郵送してきてくれます。
それに対して国内金融機関は、地元の中国人を顧客にしているため、原則として英語のサービスはありません。テレフォン・バンキングには英語を話すスタッフもいるようですが、その前にまず中国語で呼び出してもらわなければなりません。そのうえ口座は通帳方式で管理されるので、ステイトメントなどが郵送されてくることもなく、いったん日本に帰ってしまうと口座内容がまったくわからなくなってしまう、ということになりかねません。
ただし中国銀行(上海)の場合、インターネット・バンキングでの残高照会や口座間振替が可能です。ほとんどの人は人民元を定期預金にしておくでしょうから、頻繁に口座内容を確認する必要もないと思います。
上記のようなメリットとデメリットを考えたうえで、口座開設する金融機関は各自でご判断ください。
もっとも、国内銀行は1元から口座開設でき、口座管理料も必要ないので、両者のメリットを活かすために、外資系銀行と国内銀行の両方に口座をつくっておく、というのが現実的かもしれません。
A9 上海は日本から約2時間、深圳は香港から電車で約40分です。日本人の場合、このどちらかで口座開設する人がほとんどでしょう。
HSBC中国であれば、口座開設が上海支店でも深圳支店でもほとんど違いはありません(口座開設地と異なる支店での入出金に別途手数料がかかります)。
それに対して中国銀行の場合、上海と深圳では別の銀行なので、どちらで口座開設するかを考えておく必要があります。
中国の銀行は支店窓口が中心になりますから、基本は、行きやすいほうを選ぶということです。なにかトラブルがあった場合、支店窓口では簡単にできることでも、海外から電話やFAXで解決するのはほぼ不可能と考えたほうがいいと思います。
日本からのアクセスは上海の方が便利ですが、深圳は香港に近く、中国国内に外貨を持ち込んだり、口座から引き出した人民元を香港で両替する時などにメリットがあります。
A10人民元口座は普通預金と定期預金しかありません。
普通預金は金利が低い代わりにATMからの出金が可能です。定期預金は金利が高い代わりに解約が制限され、ATMも使えません。したがって、中国国内旅行などに使うお金を普通預金に預け、運用資金を定期預金にしておく、というのが一般的だと思います。外資系金融機関の場合はATMカードがないので、窓口で出金する予定がないかぎり、預けた資金は全額、定期にしておけばいいでしょう。
人民元定期預金は3カ月から5年ものまでさまざまな種類がありますが、私たちが上海を訪れた2004年末は金利上昇の予測が強く、銀行員からは3カ月か6カ月定期にしておくことを勧められました。ただし、中国銀行の定期預金は自動継続を指示しないと満期後に利息の付かない状態になってしまうので注意しましょう。
A11人民元口座への入金は、日本から持ち込んだ円を銀行窓口で両替するのがもっとも一般的です。
HSBC中国では、日本国内の銀行から人民元口座に直接、送金することができます。
中国銀行では、いったん外貨口座に送金し、支店の窓口で人民元に両替することになります。
Q12外貨を持ち込んで人民元に交換する場合、なにか制限はありますか?
A12外貨を人民元に交換する際には、さほど厳しい制限はありません。
ただし、1人当たり5,000米ドル相当を超える外貨の持ち込み、持ち出しは税関での申告が必要とされており、そのため銀行では、外貨の現金から人民元への1日(1回)当たりの両替金額を5,000米ドル相当と定めているところもあります。もっともこの規定はそれほど厳密に守られているわけではなく、1万米ドル程度であればなにも言わずに人民元に替えて入金してくれます。
本来であれば、5,000米ドル相当を超える外貨の入金には税関の申告書が必要になります。申告そのものは2、3分で済むので、規定以上の外貨を持ち込む際には、念のために中国側の税関で申告しておいたほうがいいでしょう。
中国から外貨を持ち出す際、この申告書があれば、その資金が中国国内で得た所得ではなく、日本から持ち込んだものであることを証明することができます。出国時に現金のチェックがあるわけではありませんが、多額の外貨を中国から持ち出そうとして、入国時の申告がなくトラブルになったケースもあるとのことなのでご注意ください。
ちなみに、1人当たり100万円相当を超える現金および現金等価物の日本からの持ち出しや日本への持ち込みには、日本の税関での申告が必要とされています。100万円を中国に持ち込む場合、日本側では申告不要、中国側で申告が必要、ということになります。
Q13日本から中国の金融機関に送金する場合、なにか制限はありますか?
A13日本から中国へ人民元を送金することはできませんが、外貨送金にはとくに制限はありません。
送金した外貨を人民元に交換することも、その人民元を支店窓口で引き出すこともできます(外貨から人民元への両替額に一定の制限がある場合もあります)。
ちなみに、1回200万円を超える海外送金(日本から海外の金融機関への送金と、海外から日本の金融機関への送金)は、送金した(送金を受け取った)支店から所轄の税務署に送金調書が提出されることになっています。またマネーロンダリング対策のため、海外送金にあたっては、日本の金融機関は運転免許証などによる本人確認を義務づけらています。
A14人民元は管理通貨であり、貿易などの実需取引以外では、外貨に交換したり、海外に送金したりすることはできません。ただし旅行者向けの特例として、外貨から人民元に両替して6カ月以内であれば、帰国時に空港の金融機関支店で外貨への再両替が可能です。その際、両替時のレシートと、帰国便のチケットが確認されます。
外貨から人民元に交換して銀行口座に入金した場合も、入金から6カ月以内であれば、空港の支店で外貨に再両替することができます。ただし、空港には中国銀行や中国建設銀行などの国有商銀の支店しかなく、両替可能な銀行は限られています。
Q15中国から人民元を持ち出す場合は、どんな制限がありますか?
A15中国国内から旅行者が人民元を持ち出す場合は1人6,000元が上限とされていましたが、2005年1月より2万元(約25万円)に引き上げられました。
人民元を香港に持ち出せば、米ドルや香港ドルへの両替は自由にできます。
中国からマカオへの人民元の持ち出しに限り、上限規制はありません。これはもちろん、マカオのカジノで人民元を使ってもらうための特別措置です。
Q16中国国内の金融機関から中国外に送金することは可能ですか?
A16中国国内の金融機関は、銀行窓口で入金された外貨と、海外から送金された外貨を厳密に区別することが義務づけられています。このうち、海外から送金した外貨は、比較的簡単な手続きで中国国外に送金することが可能です。窓口で入金した外貨は、中国外に送金することはできません。
また、海外から送金した外貨を中国国内の支店窓口で外貨のまま出金することはできません(人民元に両替して出金することは可能です)。
これらの煩雑な手続きは、すべて中国政府の外貨管理政策に基づくものです。
Q17ATMカードを使って、人民元預金を海外で引き出すことはできますか?
A17中国国内銀行のATMカードを日本で利用することはできません。ただし香港、シンガポール、韓国など、中国人旅行者の多い一部の国や地域ではATMからの預金の引き出しが可能です。
A18人民元預金の利息には、中国国内で20%の源泉徴収課税が発生します。
私たち日本の居住者が海外で得た銀行預金の利息は総合課税の対象であり、利息が発生した時点の為替レートで日本円に換算し、確定申告の際に、他の所得と合算して申告納税する必要があります。ただし年間収入金額2,000万円以下のサラリーマンの場合、20万円以下の雑所得は申告免除の特例があります。専業主婦など他に所得のない人の場合、年間38万円の基礎控除の範囲なら同じく申告の必要はありません。
将来、人民元の切り上げによって為替差益が生じた場合は、円に両替して利益が確定した時点で、雑所得として申告納税することになります。
*上記の記述は2005年3月現在の情報に基づいています。その後の変更点は各自でご確認ください。