小富豪のためのハワイ極楽投資生活・入門


ハワイに関する10の誤解

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2)ハワイはアメリカである

 ハワイはもちろんアメリカ合衆国の一部なのですが、アメリカ版ハワイ移住ガイド『So You Want to Live in HAWAII(で、あんたはハワイに住みたいんだろ)』(Tony Polancy 1998)を読むと、「ハワイは合衆国The United of StatesだけどアメリカAmericaじゃない」と書いてあります。

 別のガイドブックには、「現地の人に対して『俺たち、明日アメリカに帰るんだ』という言い方はしないように」との注意書きがありました。これはいったいどういうことでしょう?

 アメリカのハワイ案内には必ずといっていいほど「カマアイナKama’aina」「ロコLocal」「マラヒニMalahini」「ハウリーHaole」の4つの現地語の説明が載っています。

 このうちカマアイナとロコは「ハワイ育ちの」「現地の」という意味で、それに対してマラヒニは「新参者new comer」、ハウリーは「外人foreigner」になります。もうおわかりのように、これは沖縄で生まれ育った「ウチナンチュ」と、それに対する「ヤマトンチュ(大和人)」「ナイチャー(内地人)」という方言に非常によく似ています。アメリカ人にとってハワイとは、日本人にとっての沖縄のような存在なのです。

 ハワイ語の微妙なニュアンスはわかりませんが、ハウリーの本来の意味は「青白い顔」で、ハワイ島にやってきた白人を指します。たとえ外国人であっても、日本人旅行者が現地で「ハウリー」と呼びかけられることはまずありません。

 またカマアイナはネイティヴ・ハワイアン(あるいはその混血)を指し、ロコはそれよりも少し広い意味で日系やフィリピン系ハワイ人も含みますが、たとえハワイ生まれでも白人が「ロコ」を名乗ることには抵抗があるようです。ハワイに暮らす白人はマラヒニ(新参者)であり、ロコ(現地人)にはなれないのです。この背景にはもちろん、ハワイ王国の滅亡の歴史が大きく影響しています。

 18世紀末にキャプテン・クックがハワイを訪れた後、ほぼ50年間でハワイ諸島の土地のほとんどが白人の支配下に置かれ、その一方でネイティヴ・ハワイアンは島外から持ち込まれた伝染病のために人口が半減するという大打撃を受けます。

 1861年に始まった南北戦争でアメリカ南部からの砂糖の供給が途絶えると、白人事業主はハワイにサトウキビ農園(プランテーション)をつくり、乏しい労働力を補うために日本や中国、フィリピンから農奴を輸入しました。

 そして1893年、アメリカ海兵隊がハワイに上陸する中、白人勢力が王政を廃してハワイ共和国を設立、彼らによる“民主的手続き”によって98年8月12日にアメリカ合衆国の領土となったのです(アメリカの50番目の州に昇格したのは第二次大戦後の1959年)。

 こうした植民地化の歴史の中で、ハワイ人たちは先祖の土地を白人に奪われ、サトウキビ農園で奴隷として過酷な労働を強制されることになりました。ハワイの不動産取引では借地物件の多さが目を引きますが、これは少数の白人大地主が大半の土地を所有しているためです。

 現在ではその比率はかなり下がりましたが、21世紀に至っても「ビッグ・セブン」などと呼ばれる大地主がハワイの土地の4分の1を支配する異常な事態が続いています。

 こうした歴史を背景に、ハワイでは今も「ハワイ独立」を掲げるハワイ人の政治組織が活動しています。もっとも現在では人口におけるネイティヴ・ハワイアンの比率は1%にも満たないので、その試みが実現する可能性はほとんどありません(純粋なハワイアンは、ハワイ州の人口約120万人のうち1万人程度で、混血を含めても約20万人にしかなりません)。

 ハワイを舞台にしたサーフィン映画(最近では女の子のサーファーの青春を描いた『ビッグクラッシュ』など)を見ると、能天気な白人観光客が地元の若者たちと対立する場面がよく出てきます。

 実際にハワイ島の白人永住者が疎外感や“逆差別”を感じることも少なくないようで、一部の公立学校では本土からやってきた白人の子どもに対するいじめが深刻な問題になっています。逆に“軍人の町”パールシティでは、メインランド(アメリカ本土)から来た白人たちによる有色人種への差別の話もしばしば聞きます(とはいえ、ハワイはアメリカの中では人種差別の少ない地区です)。

 ハワイはアメリカ本土の白人にもっとも人気のある観光地ですが、一部の良心的な白人はアメリカの過去の不正義に疚しい思いを抱いています(このあたりも日本と沖縄の関係に似ています)。その一方で、ハワイを「英語の通じる外国」だと思ってやって来る無神経な観光客は後を絶ちません。カマアイナやハウリーという言葉の背後には、こうした複雑な感情が潜んでいるのです。


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