Illustrated Guide to Join Global Markets


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 Introduction “金融2.0”という革命を体験しよう

 本書は、「海外投資を楽しむ会(AIC)」の10周年企画として、これまでに得た知識と経験を集大成したシリーズの一冊で、1万6,000人を超えるAIC会員が実際に口座開設し、日々使っている海外の5つの銀行と8社の証券会社(ブローカー)を紹介しています。

 もちろんこれらの金融機関が、世界最高のサービスを万人に提供しているというわけではありません。投資家のニーズはさまざまですから、世界中を探せば、あなたにふさわしいより優れた金融機関が見つかるに違いありません。

 それでも「至高の銀行・証券会社」と名付けたのは、ここに紹介した金融機関が、10年の歳月と多数の会員の支持によって選ばれたものだからです。少なくとも、本書が海外の金融機関を選択する際の基準になることは間違いないでしょう。

 本シリーズの前作で理論編にあたる『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(橘玲著)では、投資・資産運用の世界で起きている“金融2.0”とでも呼ぶべき革命について詳細に報告されています。

 経済のグローバル化と情報通信技術の急速な進化によって、いまや個人投資家はプライベートバンクや機関投資家に匹敵する資産運用の選択肢を手に入れ、主婦やフリーターでもヘッジファンド並みのレバレッジを利かせたデリバティブ・トレードを行なえるようになりました。

 しかしこのSF的近未来は、さまざまな規制と言葉の壁に縛られた日本の銀行や証券会社を使っているだけでは体験できません。“日本の常識”に囚われていては、個人投資家はいつまでたってもグローバル・スタンダードから取り残されたままです。

プライベートバンクとは何か?

 プライベートバンクは最低預金額1億円からという富裕層向けの金融機関で、ピクテやミラボー、ロンバー・オディエ・ダリエ・ヘンチなどスイスの名門銀行に口座を持つことが長らく個人投資家の到達すべき頂点とされてきました。世界の金融市場を自在に操り、貧乏人には手の届かない魔法のような運用をしていると思われていたからです。

 プライベートバンクは、簡単にいえば銀行と証券会社(投資銀行)の合体したもので、個人投資家にも機関投資家並みの投資機会を提供することができます。

 スイスの大手プライベートバンクに口座を持てば、世界の主要国の株式や債券はもちろん、ヘッジファンドを含むオフショアファンドや金などの商品も口座に組み込み、一括管理することが可能になります。そのうえ資産の日常的なメインテナンスは、あらかじめ決めておいた運用方針に従って担当者(リレーションシップマネージャー)が行なってくれるのですから、富裕な投資家にとってはきわめて便利な仕組みです。

 それに比べて日本の銀行は、法律により、長らく円預金・外貨預金などの預金商品しか販売できませんでした。1990年代末の金融ビッグバンによって規制は徐々に緩和され、ファンドや保険商品の窓口販売が解禁されましたが、株式の取次ぎはいまだに認められていません。

 日本の証券会社は、現在でもほとんどが日本株しか扱っていません。世界には魅力的な企業がたくさんあるにもかかわらず、Web2.0革命を主導するGoogleにも、時価総額で世界最大の金融機関に躍り出た中国工商銀行にも、インドのハイテク産業を牽引するインフォシス Infosysにも投資することはできません。

 日本の個人投資家は、さまざまな規制で国家によって守られている代償として、投資の選択肢を放棄せざるを得なかったのです。

 90年代までは、個人投資家が海外市場に投資する方法は、証券会社で手数料の高いファンドを買う以外にありませんでした。

 海外の株式や債券を自由に取引するためには、1億円以上の金融資産を築いてプライベートバンクに口座を開く以外になかったのです。これはまさしく、富裕層のみに許された特権でした。

個人がプライベートバンクを超える時代

 ところがいまや、複数の株式市場にアクセスできるマルチマーケットのオンライン証券会社の登場によって、こうした状況は一変しました。

 たとえば、アメリカ(ファーストレード証券)・香港(BOOM証券)・ヨーロッパ(インタナクス証券)の3つのオンライン証券会社に口座を開けば、20以上の主要株式市場で全上場銘柄を売買することができます。

●ファーストレード/BOOM/インタナクスで取引可能な株式市場
北米

 

アメリカ(個別株・ETF、ADR、REIT、

米国債、個別株オプションなど)、カナダ

ヨーロッパ

 

イギリス、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、スイス、

イタリア、スペイン、スウェーデン

アジア

 

日本、中国(B株)、香港、韓国、台湾、シンガポール、

タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン

オセアニア オーストラリア、ニュージーランド

 個別株以外でも、アメリカの証券会社では市場で取引されている膨大な米国債や社債をオンラインで売買することができますし、米国市場のETFやADR、ロンドン市場のGDR、各国市場に上場されているREITなどを利用してエマージング市場や世界の不動産に分散投資することも可能です。

 さらには、オフショアファンドは販売手数料を割り引いて販売してくれますし、オンラインでヘッジファンドが買える証券会社もあります。

 プライベートバンクでも、これだけの投資機会を提供できるところはほとんどありません。そのうえ口座開設に必要な資金(最低預金額)は、すべての証券会社を合わせても50万円に満たないのです。

 お金持ちがプライベートバンクに高い手数料を払って資産を運用するとしたら、グローバルなポートフォリオをDIY(Do It Yourself)でつくる個人投資家は、10分の1以下のコストでそれ以上のことができるようになりました。これを「革命」と呼ばずして、なんというのでしょう。

ETFという新たな革命のはじまり

 マルチマーケットのオンライン証券会社の登場と並んで、資産運用に革命的な変化をもたらしたのがETF(上場投資信託)です。

 日本でETFというと日経225やTOPIXなど株価指数に連動したものしかありませんが、ETF投資の本場であるアメリカでは、AMEX(アメリカン証券取引所)を中心に750本近くの多様なETFが上場されており、その数は日々増えつづけています。

 いまでは、エマージングを含む世界の株式市場への国際分散投資はもちろん、債券や不動産(REIT)、商品、為替まで、ETFを組み合わせることで、自分だけのポートフォリオを自在に構築することができるようになりました。

 日本の年金積立金は運用資産が100兆円を超えますが、それですらこんな先進的なポートフォリオを組むことはできません。もはや、国家が個人に代わって年金資金を運用する合理的な理由はどこにもないのです。

 日本でも一部の証券会社が海外ETFを扱いはじめましたが、その本数はまだまだ少なく、本格的な資産運用のためにはやはり海外の金融機関を利用するしかありません。

 ETFを中心に、本書で紹介した銀行・証券会社を活用してどのような金融商品に投資するかについては、姉妹編である『究極の資産運用編』で具体的に説明していますので、併せてご覧いただければ幸いです。

 プライベートバンクの一任勘定がパック旅行とするならば、私たちが提案するのは手作りの個人旅行です。

 最先端のテクノロジーが大衆に開放されたことによって、私たちはいまや“投資のプロ”をも上回る巨大なパワーを手に入れました。それをどのように活用し、いかにして資産運用のゴールに到達するかは、投資家一人ひとりの判断に任されているのです。

 個人旅行にはリスクもありますが、それを上回る旅の楽しさを与えてくれます。“専門家”に任せ、お仕着せの旅行をしているだけでは、世界のほんとうの姿は見えてきません。

 さあ、あなたもいっしょにこの「革命」を体験してみませんか?

橘玲+海外投資を楽しむ会


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